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中国特許出願に対する情報提供

2021年12月07日

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■概要
特許出願の公開後、誰でも、その権利化を阻止するために、その出願が専利法の規定に合致していない旨の情報を国務院特許行政部門へ提供することができる。情報提供の関連手続と留意事項は以下のとおりである。
■詳細及び留意点

 特許(中国語「发明专利」)出願の公開日から権利付与の公告日までの間に、専利法の規定に合致していない特許出願について、誰でも国務院特許行政部門(中国語「国务院专利行政部门」)に情報提供(中国語「公众意见」)をし、かつ、理由を説明することができる(実施細則第48条)。中国の実務では、情報提供は頻繁に行われており、ライバル会社の特許出願の権利化を阻止できる手段の一つとして注目されている。

(1)情報提供の時期
 特許出願の公開日から権利付与の公告日までの間、いつでも可能である(実施細則第48条)。ただし、提供された情報が特許査定後に届いた場合、審査官(中国語「审查员」)は当該情報を参考にする必要はない(審査指南第2部分第8章4.9)。

(2)情報提供の理由
 専利法実施細則第53条に規定されている拒絶事由に該当する理由は全て情報提供の理由になる。ただし、実務においてよく利用されているのは以下の8つである。
・専利法第9条(ダブルパテント)
・専利法第22条第2項(新規性欠如)
・専利法第22条第3項(進歩性欠如)
・専利法第25条(特許の保護対象外)
・専利法第26条第3項(実施可能要件違反)
・専利法第26条第4項(サポート要件違反)
・専利法第31条第1項(単一性違反)
・専利法実施細則第20条第2項(必須の技術的特徴の欠如)

(3)情報提供の手続・提出書類等
(i)情報提供の手続
・情報提供は、意見陳述書や引用文献(特許/実用新案公報、雑誌、書籍、技術辞典、学術文献等)を、書面により国務院特許行政部門へ提出して行う。
・誰でも情報提供をすることができ、匿名での情報提供も可能である。また、官庁手数料は不要である。
(ii)提出書類
・提出書類の様式についての規定はなく、意見陳述書と引用文献両方を提供しても、引用文献のみまたは意見陳述書のみを提供してもよい。
・意見陳述書に関しても様式は定められていないが、通常、拒絶理由通知(中国語「审查意见通知」)に応答する際に使用される意見陳述書の様式を利用して情報提供用の書類を作成する。意見陳述書においては、当該特許出願に特許付与されるべきではない理由を、無効審判請求時と同様に詳細に説明する必要がある。
・提出することができるものについても特に規定はないが、通常、各国特許庁によって公開、公告された特許/実用新案公報ないしその他の刊行物等の引用文献がほとんどである。製品のサンプルやビデオ画像などは、その真実性の認定が難しいため、提出しても認められない可能性が高い。
・英語以外のその他の外国語(例:日本語)で記載された引用文献を提出する場合には、関連する箇所の翻訳文をあわせて提出すること、または関連する箇所の内容を意見陳述書に書きこむことが望ましい(翻訳文の提出は義務ではない)。

(4)提供した情報の取り扱いおよび効果
・審査官は、提供された情報について、必ず参考にしなければならないというわけではなく、裁量により参考にするかどうかを決定する。
・提供された情報の取り扱い状況について、専利局(中国知識産権局に所属する特許部門)は情報提供者に知らせる必要はない(審査指南第2部分第8章4.9)。
・提供された情報は単に審査官の参考に供するものであるため、情報提供があった旨は出願人には通知されない。
・情報提供の効果に関しては、情報提供後に発行された拒絶理由通知などを通じて把握することができる。中国知識産権局は、2011年より「中国専利照会システム(中国語「中国及多国专利查询系统」)」を立ち上げており、拒絶理由通知が発行されたかどうかは、このシステムを利用してオンラインで調べることができる(ただし、およそ1週間のタイムラグがある)。なお、システム利用する際には、携帯番号、メールアドレスを記載し、登録する必要がある。

(5)留意事項
(a)より効率的な情報提供を行うため、情報提供を行う前に対象特許出願の法的ステータスおよび出願後のクレーム補正の有無などを、前記「中国専利照会システム」を利用して確認しておいた方がよい。
(b)上述の通り、審査官は必ず情報提供の内容を参考にするわけではないが、実務上、審査官が検索を行う前に情報提供を行うと参考にされる可能性が高いと考えられているため、情報提供を行う場合は、拒絶理由(中国語「审查意见」)が発行されるまでのできるだけ早い時期に行った方がよい。なお、実体審査(中国語「实质审查」)に入った旨の通知書が出される前であれば(前記「中国専利照会システム」を利用して当該通知書がだされたかどうかを調べることができる)、審査官が検索を行う前であると推測することができる。
(c)登録された特許権を無効にする手段として無効審判(中国語「无效宣告」)があり、中国の実務では、無効審判過程におけるクレーム補正は審査過程の中間処理に比べて厳しく制限されている(例:明細書に開示された内容がクレームされていなければ、無効審判の過程においてその内容をクレームに加えることができない)。そのため、大事な文献である場合など、場合によっては、情報提供を行うより、その文献を証拠にして無効審判請求を行った方が得策であることもある。

■ソース
中華人民共和国専利法(2020年改正)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
中華人民共和国専利法(2020年改正)新旧対照表
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601taiou_jp.pdf
中華人民共和国専利法実施細則(2010年2月1日改正)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20100201.pdf
中国専利審査指南 2010 第2部分第8章 実体審査手続
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20100201.pdf
中国専利照会システム
http://cpquery.cnipa.gov.cn/
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2021.10.12

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