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中国における商標の色彩の判断

2021年05月27日

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■概要
(本記事は、2024/2/27に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/38325/

(2022年9月20日訂正:
本記事のソース「商標申請書式(商标注册申请书)」のURLが、リンク切れとなっていたため、修正いたしました。)

中国では、商標は「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」とに分けられる。また、複数の色の組合せのみから成る模様的な「色彩の組合せ商標」も商標の一種として出願することができる。
■詳細及び留意点

(1)色彩商標の種類
(i)「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」
 商標登録出願をする場合、公表された商品および役務分類表に基づき、分類毎に出願しなければならない。商標登録出願は一件毎に、「商標登録願書」1部、商標見本1部、色彩の組合せまたは着色見本を商標登録出願する場合には、着色見本の他に、白黒見本を1部提出しなければならない。色彩を指定しない場合、白黒見本を提出しなければならない。(商標法実施条例第13条1項)

A.色彩を指定しない商標(モノクロ商標、白黒商標)と、B.色彩を指定する商標の例は次のとおりである。なお、下記はいずれも中国商標網の公開情報から任意に検索したものである。

A.色彩を指定しない商標

B.色彩を指定する商標
例:

(ii)色彩の組合せ商標
 上記「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」とは別に、色彩の組合せのみから構成される商標がある。「色彩の組合せ商標」とは、二種類または二種類以上の色により構成される商標を指す。なお、「色彩の組合せ商標」とは、複数の色の組合せのみから成る模様的なものを言い、文字、図形を含むものは色彩を付していても「色彩の組合せ商標」に属さず、色彩を指定する商標に属することとなる。
 実際には、「色彩の組合せ商標」は、自他商品識別力を有すると判断される可能性が低く、中国では、出願件数と登録件数とは共に非常に少ないのが現状である。以下は登録の一例である。
例:

(2)審査時の商標類否判断における色彩の役割
 中国では、色彩は審査時の商標類否判断の主な要素ではなく、以下に示す2点が商標類否判断の主な要素とされる。
(i)中国商標審査基準によれば、商標における外国語、アルファベット、数字の部分が同一または類似し、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、類似商標と判断される。下に示す商標(審査基準に掲載された例)は、色彩における差異はあるが、商標におけるアルファベット同一であるため、類似商標と判断された。

例1:

(ii)中国商標審査基準によれば、商標における図形の部分が類似し、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、類似商標と判断される。下に示す商標(審査基準に掲載された例)は、色彩における差異はあるが、商標における図形部分が同一であるため、類似商標と判断された事例である。

例2:

(3)色彩の組合せ商標の審査
(i)方式要件
(A)色彩の組合せ商標を出願する際、出願人は願書で色彩組合せ商標である旨を説明しなければならない。当該説明がない場合は、カラーの図面が提出されたとしても、色彩の組合せ商標として審査されない。

出願願書(中国語)

出願願書(和訳)

 色彩の組合せ商標を出願する際、商標出願の声明のところに、「色彩の組み合わせによる商標出願」を選択しなければならない。

(B)出願人ははっきりしたカラーの図面を提出しなければならない。商標の図面は、色彩の組合せ方式を示すカラーエリアか、または色彩の使用位置を示す図形の輪郭でなければならない。当該図形の輪郭は商標の構成要素ではなく、点線で示すべきであって、実線で示してはならない。

(C)出願人は商標の説明において色彩の名称と色数を明記するとともに、当該色彩組合せ商標のビジネス活動での具体的な使用方式を具体的に説明しなければならない。
(a)カラーエリアで色彩の組合せ方式を示し、商標の説明を添付する。
例:

指定役務:自動車ガソリンスタンドにおけるサービス

 商標の説明:当該色彩組合せ商標は緑、アントラシート、オレンジという三つの色彩からなる。緑(Pantone 368C)は60%、アントラシート(Pantone 425C)は30%、オレンジ(Pantone 021C)は10%をそれぞれ占めており、図に示すように配列され、車両ガソリンスタンドの外観に使用される。

(b)点線による図形輪郭で色彩の使用位置を示し、商標の説明を添付する。
例:

指定商品:ダンプカー、トラクター

 商標の説明:当該色彩組合せ商標は緑、黄色という二つの色彩からなる。緑はPantone 364C、黄色はPantone 109Cである。緑は車体に使用され、黄色は車輪に使用される。点線部分は当該商品における色彩の位置を示しており、車両輪郭と外形は商標の構成要素ではない。

(ii)実体要件
 色彩の組合せ商標も一般の商標と同様に、商標法第10条に反するものは商標登録されない。また、A.識別力の審査とB.色彩の組合せ商標の同一・類似の審査がある。

A.識別力の審査
 単に指定商品の天然色、商品自体または包装物および役務の場所に通用または常用する色彩でしかなく、商品または役務の出所を識別する役割を果たせないものは、顕著な特徴に欠けると判定される。
例:

指定商品:歯磨き指定商品:洗剤、洗濯シート指定役務:整髪

 通常、色彩組合せ商標は長期間の使用を経て初めて顕著な特徴を備えるようになる。商標局は審査意見書を出して、使用の証拠を提出するとともに、商標が使用を通じて顕著な特徴を備えるようになったことについて説明するよう、出願人に要請することができる。

B.色彩の組合せ商標の同一・類似の審査
 色彩の組合せ商標の同一・類似の審査には、色彩の組合せ商標間の審査、および色彩の組合せ商標と平面商標・立体商標との間の審査が含まれる。

(a)色彩の組合せ商標間の同一・類似の審査
 二つの色彩の組合せ商標を比べ、その組合せの彩色と配列の方式が同一または類似し、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、同一または類似商標と判断される。

例1︓類似商標とされるもの

 ただし、使用する彩色が違うもので、または、同一もしくは類似する彩色を使用したが配列・組合せの方法が違うもので、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがないものは除く。

例2︓類似商標とはされないもの

例3︓同⼀または類似商標とはされないもの

(b)色彩の組合せ商標と平面商標・立体商標との間の同一、類似の審査
 色彩の組合せ商標が、平面商標の図形または立体商標の指定色と同一または類似し、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、同一または類似商標と判断される。

例4:同一または類似商標とされるもの

 ただし、同一または類似する彩色を使用したが、全体的効果が明らかに違うものであって、関連公衆に商品または役務の出所を誤認させる恐れがないものは除く。
例5:同⼀または類似商標とはされないもの

(4)色彩商標の効果
 中国では、色彩を指定しない商標(すなわちモノクロ商標)が登録されたら、色を変えて使用しても、登録商標の使用として認められている。一方、色彩を指定する商標が登録されたら、色を変えて使用することは、登録商標の使用には該当しない。もし、その色を変えて使用した登録商標にRマークをつけた場合、登録商標を許可なく変更した行為に該当し、中国商標局が、商標法第49条1項に基づき、期間を定めて是正を命じまたはその登録商標を取り消すことがあり得る。

(5)留意事項
 文字、図形等より成り、これに色彩を付して使用する平面商標の商標登録出願に際して、色彩を指定するか、色彩を付さずにモノクロで出願するかは、検討を要するところである。
 中国では、商標を構成する要素のうち、「色彩」は、文字、図形等に比して軽視されている。したがって、色彩を指定しないモノクロ商標は、どのような色彩を付して使用されても「登録商標の使用」と認められ、また文字、図形が類似している商標は、色彩の如何にかかわらず類似とされる。これに対し、色彩を指定した商標は、色を変えた商標との類似関係は生ずるものの、色を変えた商標の使用は「登録商標の使用」とは認められない。
 従って、色彩を指定しない登録商標は、どのような色彩を付して使用しても「登録商標の使用」なので、「不使用取消」を免れるが、色彩を指定した登録商標は、異なる色彩を付して使用しても「不使用取消」を免れないこととなる。
 付する色彩との関係で自他商品識別力の認められる特殊な場合(例えば、ナショナルカラーとの関係から特定の色が必須とされるケースや特定の色彩の使用により顕著性を主張するようなケース等)を除き、自由に色彩を付して使用するために、モノクロ商標出願が望まれる。

■ソース
・中国商標法
・中国商標法実施条例
・商標審査基準(第五部分 色彩の組合せ商標の審査)
(中国語)http://www.cta.org.cn/zcfg/xzgz/201703/W020170315577221074667.pdf#page=117
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20170105_1.pdf#page=111
・商標申請書式(商标注册申请书)
http://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/sbsq/202112/t20211231_5960.html
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2021.02.09

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