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ベトナムにおける特許制度のまとめ-手続編

2020年07月09日

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■概要
ベトナムにおける特許制度運用について、その手続き面に関する法令、出願実務を関連記事とともにまとめて紹介する。
■詳細及び留意点

1. 出願に必要な書類

 

 特許出願について、願書、クレームを含む明細書、所定の手数料および料金の納付証が、出願受理のために必要な最低限の書類とされる(知的財産法第108条、科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN(2018年1月15日付発効)以下「通達」7.1 a))。最低限の書類がそろっている場合には、出願を受理し、出願日を認定する(通達12.2 a))。

 

関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/

 

2. 記載が認められるクレーム形式

 

(1)認められるクレーム形式

 特許審査ガイドライン(QUY CHẾ THẨM ĐỊNH ĐƠN ĐĂNG KÝ SÁNG CHÊ 5.7.3.2 a)には、クレームの1項ずつは、保護されるべき製品型の発明(構造、設備、化合物、薬品、化粧品、食物など)またはプロセス型の発明(生産方法、調整方法、通信方法、処理方法など)の1つのみに言及されるべきことが説明されている。

 

(2)認められないクレーム形式

 相互に異なる対象についての独立クレームは、他のクレームを援用できない。ただし、その援用によりその他の項の内容全部の繰り返しを回避できる場合を除く(通達23.6 c) (viii))。

 

関連記事:「ベトナムにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務」(2017.5.23)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13679/

 

3. 出願の言語

 

 提出書類はベトナム語により作成されていることが必要である(知的財産法第100条第2項、通達7.2 b)(ii))。委任状、発明特許等を受ける権利の承継を証明する書類、優先権証明書は外国語の原本にベトナム語の翻訳を付すことも可能である。外国語書面出願はない。

 

関連記事:「日本とベトナムにおける特許出願書類の比較」(2015.11.13)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9429/

 

4. グレースピリオド

 

 知的財産法第60条第3項に規定されているが、グレースピリオドが認められるのは、出願が公開から6か月以内に行われ、かつ以下の(a)~(c)のいずれかの条件を満たす場合である。

 (a)特許を受ける権利を有する者の許可なしに他人により公開された

 (b)特許を受ける権利を有する者により科学的提示の形態で公開された

 (c)特許を受ける権利を有する者によりベトナム国内博覧会または公式若しくは公認の国際博覧会で展示された

 

関連記事:「ベトナムにおける特許出願の新規性喪失の例外」(2015.5.29)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8630/

 

5. 審査

 

(1)実体審査:あり

 

(2)審査請求制度:あり

 (a)審査請求期間:発明特許出願の場合には出願日または優先日から42か月以内に、出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。実用新案特許出願の場合には、出願日または優先日から36か月以内に同様に審査請求をすることができる。

 (b)請求人:出願人またはいかなる第三者も審査請求をすることができる。

 

(3)早期審査(優先審査):あり

 日本出願に基づく日ベトナム間の特許審査ハイウェイ(「PPH」)試行プログラムに基づいて、申請要件を満たすベトナム国家知的財産庁(以下、知的財産庁)への出願につき、関連する書類の提出を含む所定手続を行うことで早期審査を申請することができる。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/document/japan_vietnam_highway/shinsei_tetsuzuki_20190401.pdf

 

(4)出願を維持するための料金:不要

 

関連記事:「ベトナムにおける特許審査基準関連資料」(2016.1.29)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10250/

 

関連記事:「ベトナムにおける特許の早期権利化の方法」(2015.3.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8498/

 

6. 出願から登録までのフローチャート

 

(1)出願から登録までの特許出願のフローチャート

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(2)フローチャートに関する簡単な説明

(A)方式審査の期間は出願から1か月であり、知的財産庁は出願人にその結果を通知しなければならない。方式審査において不備が認められた場合、出願人に対し2か月の応答期間が与えられ、補正書や意見書の提出が可能である(通達13.6 a))。提出期間は2か月延長が可能である(通達9.2)。

 

(B)公開前に審査請求がされた場合は公開の日から18か月の期間内に、公開後に審査請求がされた場合は審査請求の日から18か月の期間内に実体審査を行うと規定されている(知的財産法第119条)。ただし、実務上は必ずしも上記の期限内に終わるわけではない。

 法の定める保護要件を満たしていない場合、または法の定める保護要件を満たしているが不備がある場合には、実体審査報告を出願人に対して通知する。拒絶理由を明示したうえで、補正の提案を含むこともできる。応答期間は通知から3か月である(請求により3か月の延長可)(通達15.7 a)(i)および(ii)、9.2)。

 

(C)登録許可通知から3か月の期間内に、登録料、公報発行手数料、第1年目の特許料の納付などをすべき旨を、出願人に対して通知する(通達15.7 a)(iii))。

 

関連記事:「ベトナムにおける特許・実用新案出願制度概要」(2019.6.27)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17469/

 

[権利設定前の争いに関する手続]

 

7. 拒絶査定に対する手続

 

 拒絶理由に対し反論や補正を行わない場合、あるいは行ったが拒絶理由が解消しない場合には拒絶査定となる。一般的には、出願人は知的財産庁に対する審判請求を査定受領から90日以内に行い、知的財産庁長官が審決を確定する。審決に不服のある場合には、科学技術省への不服申立を審決受領後30日以内に行い、科学技術大臣が不服申立への決定を行う(政府決議第14条、通達22、Luật khiếu nại(日本語「不服申立法」))。

 また、通達で改正された22.1において、知的財産庁の処分への審判請求に関し、対象となる決定等の範囲が明確化され、出願の補正や審査段階で提出されなかった新規資料などは、拒絶査定不服審判では検討の対象外となることが規定された(通達22.1 c))。

 さらに、通達で改正された15.7 b)の第2段落において、「新規資料(審査段階で検討されていない)であって審査結果に影響を与えうるもの」を出願人が提出した場合には、拒絶査定を取り消して、審査を再開すると規定している。ただし、何がここでいう「新規資料」に該当しうるのかといった詳細な規定はないこと、拒絶査定を受けてからいつまでそのような提出が可能なのか規定されてないこと、常にそのような新規資料の提出が可能であれば権利関係の安定性に疑問もあること、といった検討すべき課題もある。

 

関連記事:「ベトナムにおける特許出願に関する方式審査上の拒絶理由通知」(2015.3.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8516/

 

8. 権利設定前の異議申立

 

 あり。出願が公報に掲載された日から登録証付与に関する決定の日までは、如何なる第三者も、当該出願に関する登録許可または拒絶に関して知的財産庁に意見を提示する権利を有する(知的財産法第112条)。

 

9. 上記7の判断に対する不服申立

 

 行政訴訟法(Luật tố tụng hành chính)に基づく訴訟により、裁判所で争うことも可能であるが、一般的にはあまり利用されていない。

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

10. 権利設定後の異議申立

 

 なし

 

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 

(1)特許は、次の場合に完全に無効とされる。

 (i)出願人が発明の特許を受ける権利を有しないか、または譲渡されていなかった場合

 (ii)発明が特許付与日において保護要件を満たしていなかった場合

(2)特許の保護対象の一部が保護要件を満たしていないときは、一部無効とされる。

(3)特許の有効期間中、第三者は所定の手数料の納付を条件として、(1)および(2)の場合、特許の無効を知的財産庁にいつでも請求することができる(知的財産法第96条)。

 無効理由:特許を受ける権利(知的財産法第86条)、特許の一般的要件(知的財産法第58条)、特許の保護の対象とならないもの(知的財産法第59条)

 

12. 権利設定後の権利範囲の修正

 

 特許権者は、特許請求の範囲を訂正することができる。

 ただし、請求項の削除による権利範囲の減縮のみ可能である(通達20.1 b)(iii))

 日本の訂正審判に相当する制度は存在しない。

 

13. その他の制度

 

 産業財産権に関する侵害鑑定等を行う専門機関(VIPRI、http://www.english.vipri.gov.vn/)がある(知的財産法第201条)。

 

■ソース
・「知的財産法」 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/vietnam-tizaihou.pdf
・「科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN」 WIPO LEX
https://wipolex.wipo.int/en/text/466093
・不服申立法 Luật khiếu nại(75/2012/ND-CP)
https://www.moha.gov.vn/Uploads/resources/lathithuhang/files/thanh%20tra%20BNV/khieu%20nai%2C%20to%20cao/ND-75_2012CP.pdf
■本文書の作成者
特許業務法人 ナガトアンドパートナーズ
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2019.08.14

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