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ベトナムにおける商標制度のまとめ-手続編

2020年07月07日

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■概要
ベトナムにおける商標制度の運用について、その手続面に関する法令、出願実務を関連記事とともにまとめて紹介する。知的財産法、政府決議122/2010/NĐ-CPにより一部改正された政府決議103/2006/NĐ-CP (以下「政府決議」)、科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN(以下「通達」)、などの複数の法規範文書に基づき審査実務は行われている。
■詳細及び留意点

1. 出願に必要な書類

 

(1)出願書類

 願書、出願対象を特定する書類、所定の手数料および料金の納付証、その他委任状、優先権証明書なども必要に応じて提出する。提出書類はベトナム語により作成されることを必要とする(知的財産法第100条第2項、通達7.2-b-ii)。委任状、優先権証明書は外国語の原本にベトナム語の翻訳を付すことも可能である。

 

 商標出願について、願書、出願対象を特定する書類(商標見本および指定商品または役務の記載)、所定の手数料および料金の納付証が、出願受理のために必要な最低限の書類とされる(知的財産法第108条、通達7.1-a)。なお、証明商標や団体商標の場合には、それぞれの商標のタイプに応じて必須の書類が追加となるので注意が必要となる。最低限の書類がそろっている場合には、出願を受理し、出願日を認定する(通達12.2-a)。

 

関連記事:「ベトナムにおける商標出願制度概要」(2019.6.27)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17473/

 

関連記事:「ベトナムにおける商標出願に際しての指定商品および指定役務の記述」(2015.11.17)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8620/

 

 

2. 登録できる商標/登録できない商標

 

(1)登録できる商標の種類

 商標について、登録商標として保護を受けるためには、1色または複数の色彩により表された文字、単語、図形、画像、3次元の立体形状、もしくはこれらの結合であって、視覚により認識できるものが対象となる。商標権者の商品または役務を他人の商品または役務と識別する能力を有するものが対象となる(知的財産法第72条第1項および第2項)。

 

(2)登録できない商標の種類

 ホログラム、動き、トレードドレス、匂い、味、触感、音

 

(3)通常の商標以外の制度

 特別なタイプの商標としては、団体商標(Nhãn hiệu tập thể、第4条第17項)、証明商標(Nhãn hiệu chứng nhận、第4条第18項)、連合商標(Nhãn hiệu liên kết、第4条第19項)がある。さらに、ベトナム全土にわたる知名度があれば、著名商標(Nhãn hiệu nổi tiếng、第4条第20項)として保護の対象となる。

 

 

<参考情報>

 日本語を含むベトナムで常用されていない言語の文字は、使用による顕著性の立証がない限り、識別力がないものとして取り扱われることに注意が必要である(知的財産法第74条2項a)。

 

関連記事:「ベトナムにおける商標審査基準関連資料」(2016.3.1)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10292/

 

 

3. 出願の言語

 

 提出書類はベトナム語により作成されることを必要とする(知的財産法第100条第2項、通達7.2-b-ii)。

 商標が外国文字である、または外国文字を含む場合には、その発音および意味を願書に表示しなければならない(通達37.4-d-3)。

 

関連記事:「ベトナム語又は英語以外の言語を含む商標」(2014.2.28)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/5515/

 

 

4. グレースピリオド

 なし。

 

 

5. 審査

(1)実体審査

 あり。

 

(2)早期審査

 なし。

 

(3) 商標の類否判断の概要

 通達39.8に商標の類否判断、通達39.9に商品役務の類否判断の手法が規定されている。商標の構成、内容、文字部分から生じる称呼、意味および表現形式を比較し、商品役務も同時に比較するとされている(通達39.8-a)。商品相互、役務相互の類否判断において、成分・構成等の本質が同一かつ機能・使用の目的が同一の場合、または、成分・構成等の本質において近似しかつ機能・使用の目的が同一の場合、商品または役務は相互に同一(同種)とされる。本質が似ている、または、機能・使用の目的が似ていて、かつ、流通過程が同一の場合は商品相互、役務相互が類似とされる。商品と役務の類否判断に関しては、部品や原材料が共通するなどの本質において関連がある場合、機能上の関連(同時に使用されるなど)がある場合、または使用態様に強い関連(ある商品の使用と役務の提供が結びついているなど)がある場合に商品と役務が類似すると判断される(通達39.9)。

 

関連記事:「ベトナムにおける商標登録出願の早期審査」(2014.5.20)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/5960/

 

6. 出願から登録までのフローチャート

(1)出願から登録までの商標出願のフローチャート

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(2)フローチャートに関する簡単な説明

 

(A)方式審査の期間は出願から1か月であり、知的財産庁は出願人にその結果を通知しなければならない。方式審査において不備が認められた場合、出願人に対し2か月の応答期間が与えられ、補正書や意見書の提出が可能である(通達13.6-a)。提出期間は2か月延長が可能である(通達9.2)。

 

(B)公開の日から9か月以内に実体審査を行うと規定されている(知的財産法第119条第2項b)。ただし、実務上は必ずしも上記の期限内に終わるわけではない。法の定める保護要件を満たしていない場合、または法の定める保護要件を満たしているが不備のある場合には、実体審査報告を出願人に対して通知する。拒絶理由を明示したうえで、補正の提案を含むこともできる。応答期間は通知から3か月である(請求により3か月の延長可)(通達15.7-a-(i)および(ii)、9.2)。

 

(C)登録許可通知から3か月の期間内に、登録料、公報発行手数料などを納付すべき旨を、出願人に対して通知する(通達15.7-a-(iii))。

 

 知的財産庁が出願人に対して、商標の一部の要素について排他的権利を制限する、ディスクレーム(権利不要求)を求める場合には、登録許可通知にその旨の通知を、理由を明示して行う。その場合、出願人は通知から3か月の応答期間内に、意見書を提出するか、またはディスクレームに同意して登録料等を納付することになる(意見書の提出について請求により3か月の延長可)(通達15.7-a-(iii)、9.2)。

 

 

[権利設定前の争いに関する手続]

 

7. 拒絶査定不服

 

 拒絶理由が反論や補正を行わない、または行ったが拒絶理由が解消しない場合、拒絶査定となる。一般的には、出願人は知的財産庁に対する不服申立(第1回目の不服申立)を査定受領から90日以内に行い、知的財産庁長官が不服申立への決定を行う。長官の決定に不服のある場合には、科学技術省への不服申立(第2回目の不服申立)を長官決定受領後30日以内に行い、科学技術大臣が不服申立への決定を行う(政府決議第14条、通達第22条、不服申立法 Luật khiếu nại)。

 

 

8. 権利設定前の異議申立

 

あり。出願が公報に掲載された日から登録証付与に関する決定の日までは、如何なる第三者も、当該出願に関する登録許可または拒絶に関して国家工業所有権庁に意見を提示する権利を有する(知的財産法第112条)。

 

関連記事:「ベトナムにおける冒認商標出願への対抗手段」(2015.3.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/8535/

 

 

9. 上記7の判断に対する不服申立

 

 行政訴訟法(Luật tố tụng hành chính)に基づく訴訟により、裁判所で争うことも可能であるが、一般的にはあまり活用されていない。

 

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

10. 権利設定後の異議申立

 

なし。

 

 

11. 設定された商標権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 

 知的財産法第96条に基づいて知的財産庁に無効審判を請求できる。無効審判手続は、主に(1)審判請求書受理から1か月以内に権利者へ送達、(2)送達から2か月以内に被請求人の答弁、(3)答弁書提出から3か月以内に審理(3か月の追加延長可能)、(4)決定という手順で進められる。

 

 決定に不服がある場合、知的財産庁に対する不服申立(第1回目の不服申立)を決定受領から90日以内に行い、知的財産庁長官が不服申立への決定を行う。長官の決定に不服がある場合には、科学技術省への不服申立(第2回目の不服申立)を長官決定受領後30日以内に行い、科学技術大臣が不服申立への決定を行う(政府決議第14条、通達第22条、不服申立法 Luật khiếu nại)。

 

 

12. 商標の不使用取消制度

 

 登録商標が正当な理由なく継続して5年間使用されていなかったときは、いかなる法人または個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる(知的財産法第95条1項d)。

 

関連記事:「ベトナムにおける登録商標の不使用取消請求」(2014.7.25)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/6212/

 

 

13. その他の制度

 

 産業財産権に関する侵害鑑定等を行う専門機関(VIPRI、 http://vipri.gov.vn/)がある(知的財産法第201条)。

■ソース
・「知的財産法」 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/vietnam-tizaihou.pdf
・「科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN」 WIPO LEX
https://wipolex.wipo.int/en/text/466093
・不服申立法 Luật khiếu nại
https://moj.gov.vn/vbpq/lists/vn%20bn%20php%20lut/view_detail.aspx?itemid=27506
・関連記事「ベトナムにおける商標出願制度概要」(2019.6.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17473/
■本文書の作成者
特許業務法人 ナガトアンドパートナーズ
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2019.08.14

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