アジア / 出願実務 | 制度動向
タイにおける商標制度のまとめ-実体編
2020年06月04日
■概要
タイにおける商標制度の運用について、その実体面に関する法令、出願実務を関連記事とともにまとめて紹介する。■詳細及び留意点
1. 商標制度の特徴
(1)商標の一出願多区分制(タイ商標法第9条)
商標法の2016年改正により商標の一出願多区分制が導入されたが、2019年現在の実務では出願後に区分毎への分割が認められていないため、一部の区分に対し拒絶を受けた場合、拒絶を受けた区分とそれ以外の区分に出願を分割して拒絶対応と登録手続を並行で進めることはできない。
(2)商標権の譲渡(タイ商標法第49条)
商標権の登録後であれば、その指定商品または指定役務の一部のみの登録につき、譲渡・相続することが可能である。未登録の場合はそれが認められず、全ての商品・役務に関する地位を譲渡・相続しなければならない。
(3)商標ライセンス契約の登録(タイ商標法第68条、第70条)
商標ライセンス契約は書面で作成され、かつ登録官に対して登録されなければならず、登録されていないライセンス契約は、係争になった場合無効とされる(タイ最高裁判所(The Supreme Court of Thailand)判例1223/2549、5219/2550)ため、第三者対抗要件がない。登録申請書には商標権者がライセンシー商品の品質を管理できるような条件または制限、使用を許諾する商品を記載しなければならない。登録されたライセンス契約に基づくライセンシーによる商標の使用は商標権者の使用とみなされるが、登録されていないライセンス契約に基づく場合、商標権者の使用とみなされず、不使用取消の対象とされる可能性がある。
ただし、係争にならなければ、登録の有無にかかわらず、ライセンス契約の当事者間では有効とされる。
関連記事:「タイにおける商標出願制度概要」(2019.6.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17463/
関連記事:「タイ最高裁判所における判決の概要の調べ方」(2019.5.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17263/
関連記事:「タイにおける知的財産権使用許諾契約」(2015.1.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/7688/
関連記事:「タイにおけるライセンス及び秘密管理に関する法制度と実務運用」(2014.11.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/7186/
2. 登録できる商標(タイ商標法第4条)
写真、絵画、創作された図、ロゴ、名称、語句、文、文字、数字、署名、色の集合、物体の外形(shape)もしくは形状、音、またはそれらの一つもしくは複数が結合したものに対して登録が認められている。商標、役務標章、証明標章、団体商標がある。
関連記事:「タイにおける周知商標」(2018.9.13)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15747/
3. 商標を登録するための要件(タイ商標法第6条)
識別性を備え(第7条)、商標法で禁止されている特徴を持たず(第8条)、他人の登録商標と同一または類似しないこと(第13条)。
関連記事:「タイにおける商標審査基準関連資料」(2016.2.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10286/
関連記事:「タイにおける一般用語の商標登録に関する判例」(2015.3.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/8262/
4. 商標権の存続期間
・商標権の存続期間(タイ商標法第53条)
商標の登録日(出願日)から10年
・商標権の更新手続(タイ商標法第54条)
存続期間満了日前3か月の間に更新申請が可能である。さらに満了日から6か月の間の猶予期間中の手続には、更新手数料とその20%にあたる割増手数料が発生する。
関連記事:「タイにおける商標権の取得」(2014.12.19)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/7426/
■ソース
・タイ商標法(2016年7月26日施行)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou.pdf
■本文書の作成者
S&I International Bangkok Office■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2019.09.02