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韓国における実用新案制度について

2020年06月02日

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■概要
韓国における実用新案制度は一時的に無審査を採択したこともあったが、現在は審査後登録制度を採用している。すなわち特許と同一の審査制度を採択しているが、保護対象、進歩性判断基準および存続期間等は特許制度と若干異なっている。特許よりは容易に登録されるが、権利解釈においては特許権より狭く解釈される傾向がある(実用新案法第2条、第12条、第22条)(特許法第2条、第59条、第88条)。
■詳細及び留意点

(1)実用新案の対象は、物品の形状、構造、組合せに関する技術的思想の創作である。電子回路は実用新案対象である物品に含まれるが、方法発明は特許では登録が認められるのに対し、実用新案では対象外となる(実用新案法第4条)(特許・実用新案審査基準第3部第1章4.3)。

(2)特許出願書には必要な場合にのみ、図面を添付するよう規定(特許法第42条第2項)されているが、実用新案出願書には図面の添付は必須である(実用新案法第8条第2項)(特許・実用新案審査基準第2部第2章5.図面)。

(3)審査請求期限は特許および実用新案ともに出願日から3年である(実用新案法第12条)(特許法59条)。

(4)特許は創作の高度性を要求しているが、実用新案は創作の高度性を要求しない。しかし、最近はその差を大きく置かない傾向がある。とはいえ、法的には差異があり、審査における進歩性の判断時、特許は「容易に発明ができるか否か」を判断する一方、実用新案は「極めて容易に考案することができるか否か」を判断する。よって、特許と比べると実用新案は登録を受け易い(実用新案法第2条、第4条)(特許法第2条、第29条)。例えば、飲料包装パック、車両用ハンドルカバー、人形の足部分、ハンガー、クリップ等が実用新案として登録されている。これらは、容易に発明ができるため特許としては登録を受けることが難しいが、極めて容易に発明することができるものではないと判断され、実用新案として登録を受けた例である。

 以下、進歩性の判断に関する大法院判決を紹介する。

(ⅰ)特許法院2019.4.18宣告、2018허6771判決

 実用新案制度は、革新の度合いにおいて特許の対象となる発明には及ばないものの、従来の技術に比べて改善された技術思想の創作を法的に保護することにより、いわゆる「小発明」を奨励するための制度である。したがって、制度の趣旨を考慮して考案の進歩性を判断するにあたり、特許と同等程度の物差しを適用してはならない。また、考案を創作することが通常の技術者に非常に容易であるとは言えない場合には、進歩性を否定してはならない。

 

(ii)大法院2019.7.25宣告、2018후12004判決

 考案の進歩性が否定されるかを判断するためには、先行技術の範囲と内容、進歩性判断の対象となった考案と先行技術との差異および考案が属する技術分野における通常の知識を持った者(以下、「通常の技術者」とする。)の技術水準等に照らし、進歩性判断の対象となった考案が先行技術と差異があった場合であっても、そのような差異を克服することが、先行技術からの考案が極めて容易に導出することができるかを判断しなければならない。この場合、進歩性判断の対象となった考案の明細書に開示されている技術を知っていることを前提にして、事後的に通常の技術者が考案を極めて容易に考案することができるかを判断してはならない。

 

(iii)大法院2012.10.25宣告、2012후2067判決

 実用新案法第4条第2項の「その考案が属する技術分野」とは、原則、当該登録考案が利用する産業分野を指す。当該登録考案が利用する産業分野が比較対象考案の産業分野と異なる場合、比較対象考案を当該登録考案の進歩性を否定する先行技術として引用することは難しいとしても、比較対象考案の技術的構成が特定の産業分野のみに適用可能な構成ではなく、当該登録考案の産業分野で通常の技術を有する者が登録考案の当面する技術的問題を解決するために格別に困難なく利用することができる構成であれば、これを当該登録考案の進歩性を否定する先行技術とすることができる。

 

(iv)大法院1995.12.12宣告、94후1787判決

 実用新案における考案というのは自然法則を利用した技術的創作をいうが、これは特許発明とは違い、創作の高度性を要さないので、公知公用の技術を結合した考案であっても結合前に各技術がもっていた作用評価の単純な結合ではなく、結合前に比べてより増進された作用評価が認定され、当該技術分野で通常の知識を持った者が容易に実施することができないときには、これを進歩性がある考案であるとする。

 

(v)大法院2006.10.12宣告、2006후1490判決

 その考案が属する技術分野で通常の知識を持った者が比較対象考案と周知慣用の技術によって、極めて容易に考案することができる構成であるというものは、その進歩性が認定されない。

 

(5) 審査によって実用新案登録決定された後、3年間の登録料を納めれば実用新案権が設定される。権利存続期間は出願日から10年であり、権利は設定登録日から発生する(実用新案法第22条)(特許法第88条)。

(6)審査官が実用新案登録決定後、明白な拒絶理由を発見した場合には職権で登録決定を取消し、再び審査することができる(実用新案法第15条、特許法第66条の3準用)。ただし、特許法第66条の3に記載されている以下の場合に該当する場合はこの限りではない。http://www.choipat.com/menu31.php?id=14

 1.拒絶理由が第42条第3項第2号(その発明の背景となる技術を記載)、同条第8項(特許請求の範囲の記載方法)および第45条(特許出願の範囲)の規定による要件に関するものである場合

 2.その特許決定により特許権が設定登録された場合

 3.その特許出願が取り下げ、放棄された場合

(7)実用新案の設定登録日から登録公告日後6か月となる日まで、誰でも特許審判院長に実用新案登録取消申請をすることができる(実用新案法第30条の2)。

(8)実用新案権が設定されれば実用新案権登録公告されるし、これに異議があれば利害関係人は無効審判を請求することができる。(実用新案法第31条)

(9)実用新案出願が審査で拒絶査定された場合、再審査請求または拒絶決定不服審判を請求することができる。補正が必要な場合、補正書の提出と共に再審査請求ができる。再審査で拒絶査定になれば、拒絶決定不服審判請求をすることができるが、この時には補正はできない。(実用新案法第15条)

(10)再審査で拒絶決定後の補正が必要な場合は、拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日(30日ずつ2回延長可能)以内に分割出願で対応することもできる(実用新案法第11条、特許法第52条準用)。

(11)特許出願が審査で拒絶査定になれば、拒絶決定不服審判請求期限以内に実用新案出願に変更することができる。(実用新案法第10条)

 

留意事項

(1)韓国での実用新案制度は日本と違い、審査を経た上で登録される。登録後の権利行使は特許と同一であるため、特許登録が難しい場合には実用新案で権利取得を試みることも必要である。

(2)実用新案権は特許権よりも容易に登録を受けられるが、権利が狭く解釈される傾向がある(大法院2006.5.25宣告、2005도4341判決等)。実用新案権は図面に記載された範囲に限定され、少し変更すれば侵害とは認められない場合が多々ある点に注意しなければならない。出願時から侵害が起こりそうな範囲を予めカバーするように、明細書を作成する必要がある。

(3)実用新案権は侵害を受けやすいため、随時、市場調査等の監視を徹底して行う必要がある。

 

参考

 2019年11月18日に特許庁主催の「小発明・アイデア保護のための公開フォーラム」が開催された。本稿作成時点では、小発明またはアイデアは保護を受けられない。しかし、このような小発明等が市場需要に存在するため、初期段階ではあるがこれを保護するための制度が検討されている。

■ソース
・韓国実用新案法
http://www.choipat.com/menu31.php?id=125&category=0&keyword= ・大法院総合法律情報
https://glaw.scourt.go.kr/ この画面で事件番号を入力すれば、判例が検索できる(「韓国の判例の調べ方」を参照)。
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2020.01.02

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