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日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2020年05月05日
■概要
日本とシンガポールの実体審査においては、拒絶理由通知への応答期間が異なる。具体的には、実体審査において60日(在外者でない場合)または3か月(在外者の場合)の応答期間が設定されている日本とは異なり、シンガポールにおいては、審査請求のオプションによって応答期間が異なり、シンガポール知的財産庁(IPOS)に審査を請求するオプションの場合は5か月、シンガポール知的財産庁に補充審査を請求するオプションの場合は3か月である。なお、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなる。また、日本と異なり、シンガポールにおいては応答期間の延長ができない。■詳細及び留意点
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第1号または第3号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1.(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
ウ.上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2.シンガポールの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・シンガポール知的財産庁に審査を請求した場合、応答期間は5か月
・シンガポール知的財産庁に補充審査*1を請求した場合、応答期間は3か月
条文等根拠:特許規則46(4)、(4A)、(5)
シンガポール特許規則46 審査官の意見書等
(4)(a)第29条(4)に基づく審査報告、または
(b)第29条(5)に基づく調査および審査報告、
に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(4A)第29条(6)に基づく補充審査に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から3月以内に提出しなければならない。
(5)出願人が(3)に基づいて第29条(4)に基づく審査報告又は第29条(5)に基づく調査および審査報告に関する意見書を提出した場合は、
(a)審査官は、その裁量により、自己の意見の理由を詳細に記載した追加の意見書を登録官に対し発出することができ、
(b)(2)および(3)がこれに従って適用され、また
(c)(3)に基づく追加の意見書に対する応答は、追加の意見書を伴った登録官からの通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
いかなる場合も延長することができない。
条文等根拠:特許規則108(2)(b)
シンガポール特許規則108 期限の変更
(1)登録官は、当事者からの書面による請求により、(2),(3)及び(4)並びに規則108Aに従うことを条件として,登録官は,期日又は期間の満了後6月以内になされる当事者からの書面による請求により,自己が適切と認める場合は,ある行為を実行するための又はある手続を取るための本規則による所定期間及び本規則に基づいて登録官が指定した期日又は期間について,自己の指示する当事者への通知により,かつ,自己の指示する条件に基づいて,延長することができる。
(2)次の規則に定められる期日または期間は、いかなる場合も延長することができない。
(中略)
(b)規則9(1)、(2)および(3)、規則9A(1)および(2)(a)、規則19(2)、規則26(5)、規則26A(1)および(5)(a)、規則28(a)、(b)、(c)および(d)、規則29(4)、規則34(2)、規則46(4)、(4A)および(5)(c)、規則49、規則51(1)、(2)および(2A)、規則51A(1)および(2)、規則52(2)、規則53(1)、規則73(1)、規則74(1)、規則75、規則85(1)、規則86(3A)、規則88(8)(a)、規則88A(11)、規則91(3)および(5)ならびに附則4の第4項(2)
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
|
日本 |
シンガポール |
応答期間 |
60日 (ただし在外者は3か月) |
・IPOSに審査を請求した 場合:5か月 ・IPOSに補充審査*1を請求 した場合:3か月 |
応答期間の延長の可否 |
可 |
不可 |
延長可能期間 |
最大2か月 (在外者は最大3か月) |
– |
*1: 2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなる。(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
■本文書の作成者
ナガトアンドパートナーズ■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2019.08.22