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日本とマレーシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2020年04月23日
■概要
日本とマレーシアの特許の実体審査においては、拒絶理由通知への応答期間が異なる。具体的には、実体審査において60日(在外者でない場合)または3か月(在外者の場合)の応答期間が設定されている日本とは異なり、マレーシアにおける応答期間は2か月である。また、日本とマレーシアのいずれにおいても応答期間の延長は可能であるが、延長可能な応答期間の長さが異なる。■詳細及び留意点
- 日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
1.1 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10
- 手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条*1、商15条の2*2、15条の3第1項、商附則7条*3)
*1 特50条: 特67条の4、意19条において準用
*2 商15条の2: 商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用
*3 商附則7条: 商附則23条
- 手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)*4及び(12)*4を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)
*4: 1.(11)は国際意匠登録出願において、(12)は国際商標登録出願においての指定期間。
1.2 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長*5
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
*5: 平成28(2016)年4月1日から延長請求のための合理的な理由は不要になった。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(17)、方式審査便覧04.10 2. (12)
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10
- 手続をする者が在外者でない場合
(17)次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。
ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条の規定によるものに限る。)
ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
- 手続をする者が在外者である場合
(12)特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。
ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
- マレーシアの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
2.1 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・応答期間は2か月
条文等根拠:特許法第30条(1)~(3)、特許規則27C(4)、27D(5)、Practice Direction No. 1/2016
マレーシア特許法 第30条 実体審査および修正実体審査
(1)第29A条(1)に基づいて実体審査の請求が行われたときは、登録官は、その出願を審査官に付託するものとし、審査官は、次に掲げることを行わなければならない。
(a)その出願が、本法および本法に基づいて制定される規則の要件であって、当該規則により本法適用上の実体要件として指定されているものを遵守しているか否かを決定すること、および
(b)同官の決定を登録官に報告すること
(2)第29A条(2)に基づいて修正実体審査の請求が行われたときは、登録官は、その出願を審査官に付託するものとし、審査官は、次に掲げることを行わなければならない。
(a)その出願が、本法および本法に基づいて制定される規則の要件であって、当該規則により本法適用上の修正実体要件として指定されたものを遵守しているか否かを決定すること、および
(b)同官の決定を登録官に報告すること
(3)審査官が(1)または(2)に従って、(1)または場合により(2)にいう要件の何れかが遵守されていない旨を報告したときは、登録官は出願人に対し、所定の期間内にその報告書について意見書を提出するためのおよびこれらの要件を遵守するために出願を補正するための機会を与えなければならず、また、出願人がこれらの要件を遵守したことを登録官に認めさせることができないか、またはこれらの要件を遵守するために出願を補正しないときは、登録官はその出願を拒絶することができる。
マレーシア特許規則 27C 実体審査*6
(4)特許法第30条(3)が適用される場合、登録官は、審査官の報告書の写しを出願人に送付するものとし、出願人は、かかる報告書の発行日から2か月以内に当該報告書に関して意見を述べもしくは出願を補正し、またはその両方を行わなければならない。
マレーシア特許規則 27D 修正実体審査*6
(5)特許法第30条(3)が適用される場合、登録官は、審査官の報告書の写しを出願人に送付するものとし、出願人は、かかる報告書の発行日から2か月以内に当該報告書に関して意見を述べもしくは出願を補正し、またはその両方を行わなければならない。
*6: 2016年6月1日(Practice Direction No. 1/2016)より補正書提出の起算日が「the date of mailing」から「the date of substantive/modified substantive examination report」に改正された。
2.2 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・1回に限り、1か月から最大6か月の期間、拒絶理由通知への応答期間を延長することが可能
条文等根拠:特許法第30条(4)、特許法第82条、Register’s Notice No. 2/2011
マレーシア特許法第30条 実体審査および修正実体審査
(4)登録官は、(3)にいう所定の期間についての延長を承認することができるが、その延長は一回に限り承認を受けることができ、かつ、その後の延長は、第82条の規定に基づく承認を受けることができない。
マレーシア特許法 第82条 期間の延長
第27条(1A)、第29A条(8)および第30条(4)に従うことを条件として、本法またはそれに基づいて制定される規則により、ある行為または事柄がなされるべき期間が定められている場合は、裁判所による別段の明示の指示があるときを除き、登録官は、所定の手数料の納付を受け、その期間満了の前または後の何れにおいても、その期間を延長することができる。
日本とマレーシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 |
マレーシア |
|
応答期間 |
60日(ただし在外者は3か月) |
2か月 |
応答期間の延長の可否 |
可 |
可 |
延長可能期間 |
2か月(在外者は最長3か月) |
最大6か月 |
■ソース
日本特許法日本方式審査便覧04.10
マレーシア特許法
Register’s Notice No. 2/2011
http://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/EOT-PROSESEOTPATEN1-final-13-May-2011a-web.pdf Practice Direction No.1/2016
http://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/08/NoticeAmendments2016.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2019.08.09