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中国における商標出願制度概要
2020年04月16日
■概要
(本記事は、2024/10/1に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/40033/
(2020年6月10日訂正:
本記事の詳細及び留意点の(5)登録公告の部分において当初「権利の存続期間は出願日より10年であり(商標法第39条)、登録日は初日に算入する。」と記載しておりましたが、「権利の存続期間は登録日より10年であり(商標法第39条)、登録日は初日に算入する。」が正しい記載でした。お詫びして訂正いたします。)
中国における商標出願は、国家知識産権局に属する商標局に対して行い、出願手続は、主に(1)出願、(2)方式審査、(3)実体審査、(4)出願公告、(5)登録公告の手順で進められる。存続期間は登録日から10年であり、10年毎に何度でも更新可能である。
また、2014年5月1日より商標法の改正により音声商標、一商標多区分出願制度が導入され、2019年11月1日施行予定の改正法では「使用を目的としない悪意の商標登録出願」への対応が示されている。
■詳細及び留意点
商標の出願手続フローチャート図
商標(中国語「商标(商標)」)の出願手続は、上記フローチャートに示したように、主に(1)出願、(2)方式審査、(3)出願公告、(4)実体審査、(5)登録・公告の手順で進められる。
(1)出願
・一つの出願において、多数の区分について同一の商標を登録出願することができる。(商標法第22条)。また、マドリッド協定又はマドリッド議定書に基づく国際出願において、指定商品又は役務は、国内の基礎出願又は基礎登録の商品又は役務の範囲を超えてはならない。(商標法実施条例(以下「条例」という)第39条)。
・出願手続は中国語を使用しなければならない(条例第6条)。
・音声を商標として登録出願できる(商標法第8条、条例第13条)。
・優先権を主張する場合は、最初の出願から6か月以内に行い、その主張の日から3か月以内に商標登録出願の副本を提出する(商標法第25条)。なお、この期間は延長できない。
・出願公開制度はない。
・団体商標制度及び証明商標制度がある(商標法第3条)。
(2)方式審査(中国語「形式审查(形式審査)」)
・出願日は、商標局が出願書類を受領した日となる。出願手続に不備がないかの方式審査を開始し、出願書類の受理又は不受理の通知を出願人に行う。出願手続または出願書類の記載に不備があり、関連規定の要件を満たさない場合、商標局は書面により出願人にその旨を通知し理由を説明する(条例第18条)。
・出願手続または出願書類の記載が基本的に関連規定の要件を満たすが、補正(中国語「补正(補正)」)の必要がある場合には、商標局は出願人に通知し、30日以内に補正をさせる(条例第18条)。なお、この応答期間は延長できない。
(3)実体審査
・商標局は商標登録出願について審査し、登録要件を満たす出願には出願公告査定(中国語「初步审定(初歩審定」)を行い、かつ公告する(商標法第28条、条例第21条)。
・出願が登録要件を満たさない又は一部の指定商品について登録要件を満たさない場合には、これを拒絶又は部分的に拒絶し、その旨を出願人に通知し理由を説明する(商標法第29条、第34条、条例第21条)。部分拒絶の場合、不服審判を請求しない限り、登録要件を満たす部分のみが公告される。
・商標局の拒絶通知に不服があるときは、出願人はその通知の日から15日以内に商標審判部に不服審判請求を行うことができる(商標法第34条)。
(4)出願公告
・出願公告査定され公告された商標については、公告後3か月以内であれば、誰でも異議を申し立てることができる(商標法第33条)。この異議は商標局の裁定を受け、商標局の裁定に不服がある場合、当事者は裁定の通知の日から15日以内に国家知識産権局の商標審、判部(中国語「商标评审委员会(商標評審委員会」)に審判請求を行うことができる(商標法第35条)。
(5)登録公告
・出願公告後3か月以内に異議申立がないとき、又は異議が成立しないと裁定された場合は、登録(中国語「注册(注冊)」)が認められ、商標登録証を交付され公告が行われる(商標法第33条、第35条)。
・登録商標が、商標法第4条、第10条、第11条、第12条、第19条第4項の規定のいずれかに違反するとき、または欺瞞的手段若しくはその他不正手段により登録を受けたときは、その他の事業単位または個人は登録の無効を請求でき(商標法第44条)、商標法第13条第2項および第3項、第15条、第16条第1項、第30条、第31条、第32条の規定に違反するときは、商標権者(中国語「商标所有人」)又は利害関係人(中国語「利害关系人」)は登録日から5年以内に商標審判部にその登録の無効を請求できる。ただし、登録商標が馳名商標(日本における著名商標)であり、かつ悪意の出願人により登録された場合であれば、該登録商標の商標権者は無効の請求につき5年の期間制限を受けない(商標法第45条)。
・権利の存続期間は登録日より10年であり(商標法第39条)、登録日は初日に算入する。更新したい場合は、存続期間満了前12か月以内に更新手続をしなければならない。この期間に手続できなかった場合は、追加料金の支払いが必要となるが、6か月の更新手続の延長期間が認められる(商標法第40条)。
・商標が登録後3年以上不使用の場合、如何なる単位または個人も商標局に不使用取消請求ができる(商標法第49条)。
(6)留意点
2019年11月1日施行予定の改正商標法では「使用を目的としない悪意の商標登録出願」を拒絶すること(商標法第4条1項)、異議理由(商標法第33条)、無効理由(商標法第44条1項)とすることが明文化されており、加えて、悪意による商標登録行為を行政罰の対象とし、悪意による権利行使を裁判所による司法罰の対象とすることが規定されている(商標法第68条4項)。
■ソース
商標法商標法実施条例
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2019.07.29