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タイにおける商標出願に際しての指定商品および役務の書き方

2020年04月14日

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■概要
(本記事は、2024/2/13に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/38257/

タイは2013年3月1日付にてニース協定に基づく国際分類第10版を採用した。2019年11月現在、商標登録を求める出願人は、国際分類第11-2019版を指針として、指定商品・指定役務(サービス)を出願申請書に記載するが、タイにおいては、さらに明確かつ具体的な記載が求められる場合も多い。タイの商標登録官から認められる指定商品・指定役務(サービス)の書き方について解説する。
また、2016年7月28日に施行された改正法により、一出願多区分制が導入された。
■詳細及び留意点

 タイは2013年3月1日付でニース協定に基づく国際分類第10版を採用した。第10版には、34の商品分類(第1類から第34類)と11の役務(サービス)分類(第35類から第45類)がある。商標登録を求める出願人は、一般的にこの分類に従い指定商品・指定役務を記載するが、タイにおいては、さらに明確かつ具体的な記述を求められる場合がある。タイでの商標出願において、商標登録官に認められるための指定商品・指定役務(サービス)の書き方について解説する。

 

指定商品・指定役務(サービス)の記載

 タイ商標法第9条に基づき、商標登録出願は特定の商品を指定して行うことができる。なお、2016年7月28日施行の改正法により「An application may not cover goods of different classes.」の条項が削除され、複数区分の指定商品または役務をまとめて1件の出願にする(一出願多区分)または、区分ごとに複数出願するかを選択できるようになった。

ただし、2018年現在の実務においては、出願後に区分毎への出願の分割が認められておらず、複数区分を含む出願が一部の区分に対し拒絶を受けた場合、拒絶を受けなかった区分の登録手続を先に進めることができない。このため、出願を選択する際には注意が必要である。

 

 タイ商標法第9条においては、「商標登録出願は、1分類または異なる分類の何れかにおいて特定の商品に関してできるが、保護を求める各々の商品を明確に特定しなければならない。商品分類は大臣の告示により、これを定める。」としている。

 

 多くの出願人は、商標出願に際して、広範な表現を用いてその指定商品・指定役務(サービス)を特定することにより、可能な限り広範な保護を受けることを望んでおり、事業および商品の将来的な拡大や展開に備えようとする。しかしながら、タイの商標登録官は、商標分類見出し(クラス・ヘッド)やサブクラス見出し(サブクラス・ヘッド)などの広範な記述を認めないため、指定商品・指定役務(サービス)は細かく指定しなければならない。

 

 一方、過度に詳細な記述は、指定した商品が他の分類に属することがあり、指定商品を削除しなければならなくなる要因ともなる。さらに出願人は、下記の様な記載を避ける必要がある。

  例:「を含む(including)」、「特に(especially)」、「それの(thereof)」、「例えば(for

 example)」、「などの(such as)」

 

 1指定商品・役務(1区分)1,000バーツ、6指定商品・役務以上(1区分)、一律9,000バーツの手数料を納付する必要があり、実務上、願書に通し番号を付して指定商品・指定役務を記載することが一般的である。

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指定商品・役務の数に関する補正

 近年、タイの商標登録官は、補正する指定商品が出願時に記載した広範な記述の範囲内であっても、出願時の指定商品・指定役務の数が増える補正を拒絶している。このことを念頭に置き、出願人は商標出願を行う際に、指定商品・指定役務を詳細に記載しなければならない。

 

不適切な記載と適切な記載例

 以下に、指定商品・指定役務の記載に関する不適切な例と適切な例を紹介する。

 

  ・第1類:「化学品」および「工業用化学品」という記述は不適切であるため、出願人は、例えば、「化粧品産業用化学物質」、「化学産業用化学物質」のように、より詳細に商品を記載しなければならない。この分類には、医療用化学品が含まれないため、「医療用または獣医科用以外の」という記述は使用することができる(例えば、「医療用または獣医科用以外の実験室における分析用の化学薬剤」)。

 

  ・第3類:「化粧品」、「メークアップ」、「香水類」という記述は不適切であり、より具体的に記載する必要がある。従来は、「目、唇、頬および頭髪に使用する化粧品」という記述は適切であると見なされていたが、現在では認められない。ただし、「フェイシャルメークアップキット」、「フェイシャルスキンケア用化粧品キット」および「ボディスキンケア用化粧品キット」という記述は認められる。「香水類」に代えて、出願人は、「香水」、「オーデコロン」、「オードトワレ」を使用することができる。

 

  ・第5類:出願人は、指定商品の記述が不明確であり、他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために「医療用」という記述を使用することができる。例えば、「医療用栄養添加物」、「医療用栄養補助食品」、「医療用食餌療法飲料」等の記載が認められる。

 

  ・第7類:出願人は、不明確な指定商品を特定するために「機械」または「機械の部品」という記述を使用することができる。例えば、「ボール盤(機械)」、「電動カッター(機械)」、「コーキングガン(機械の部品)」、「エアスプレーガン(機械の部品)」、「バルブ(機械の部品)」、「クランクケース(機械の部品)」等の記載が認められる。

 

  ・第10類:他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために、出願人は、「医療用」という記述を加えることができる。例えば、「医療用X線装置」、「医療用X線写真」、「医療用X線チューブ」、「医療用X線保護装置」等の記載が認められる。

 

  ・第25類:「ズボン(pants)」および「靴」という語は不適切な記載となる。「ズボン」という語は、「ズボン(スポーツ用ズボンおよびズボン下は除く)」、「スポーツ用ズボン」、「ズボン下」等と明記しなければならない。同様に、「靴」は、「靴(スポーツ靴を除く)」または「スポーツ靴」等に分けなければならない。

 

  ・第28類:「玩具」という語は不適切な記載となるが、「プラスチック製玩具」、「ゴム製玩具」、「金属製玩具」および「紙製玩具」という語は認められる。

 

  ・第35類:「小売業」という記述は不適切となる。このサービスについて広範な保護を求める出願人に対しては、「小売業向け事業管理支援」等の記述が推奨される。

 

商標登録官へのアプローチ

 国際分類表に記載されている指定商品・指定役務は、商標出願時の指定商品・指定役務の記載を考える上でも、有用かつ一般的な指針となるものであるが、例示が限られており、タイにおいては十分な指針とはならない。さらに、記載されている指定商品・指定役務がタイの商標登録官に認められないものもある。

 

 商標登録官とのやり取りの経験は、登録官が認める記載要件を理解する上で重要である。しかしながら、明確な運用指針で定められている訳では無いことから、過去に出願人が登録した商品が後に認められなくなる場合もある。したがって、商標登録官とのやり取りについては予想できない展開もあるが、現行のプラクティスを十分に理解して、方策を講じることが重要である。

■ソース
・タイ商標法
・商品・役務(サービス)の国際分類第10版
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
TNY Legal Co., Ltd.
■本文書の作成時期

2019.11.11

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