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日本とインドネシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
2019年12月10日
■概要
日本およびインドネシアにおいては、それぞれ所定の期間、特許出願について分割出願を行うことができる。インドネシアにおいては、(特許または拒絶)査定の発行までは、いつでも分割出願を行うことができる。■詳細及び留意点
1. 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件については、①平成19年3月31日以前の出願、②平成19年4月1日以降の出願、の2つの出願時期によって異なる。
①平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記、特許分割出願の時期的要件(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。
②平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記、特許分割出願の時期的要件(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。なお、平成27年4月1日以降に出願された特許出願については、特許分割出願の時期的要件(2)または(3)の期間内に不責事由により分割出願できないときは、下記(4)の延長期間内に分割出願することができる。
<特許分割出願の時期的要件>
(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(特許法第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(特許法第17条の2第1項本文)
(ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(特許法第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(特許法第17条の2第1項第2号)
(iv)拒絶査定不服審判請求と同時(特許法第17条の2第1項第4号)
(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(特許法第44条第1項第2号)
(i)前置審査における特許査定(特許法第163条第3項において準用する第51条)
(ii)審決により、さらに審査に付された場合(特許法第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(特許法第44条第5項)。
(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(特許法第44条第1項第3号)
(3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(特許法第44条第6項)。
(4)その不責事由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、(2)または(3)の期間の経過後6月以内(特許法第44条第7項)
条文等根拠:特許法第44条
日本特許法 第44条 特許出願の分割 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。 二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があった日から30日以内にするとき。 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。 2~4(略) 5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 7 第1項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第2号又は第3号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後6月以内にその新たな特許出願をすることができる。 |
2. インドネシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件
インドネシアにおいては、出願から(特許または拒絶)査定が発行されるまでは、いつでも分割出願を行うことができる。
※指令書(拒絶理由通知書)発行後であってもその応答期間に関わらず、(特許または拒絶)査定が発行されるまでは、いつでも分割出願を行うことができる。
条文等根拠:特許法第38条(1)(2)、第58条(1)(2)、第62条(1)(3)(9)、特許規則第7条、第8条(1)(2)
インドネシア特許法 第38条 (1)特許出願は、出願人の自発および/または大臣の提案により補正または分割することができる。 (2)(1)項における補正または分割は、特許付与の決定が与えられる前に行うことができる。 |
インドネシア特許法 第58条 (1)実体審査の結果に基づき、特許を申請された発明が第54条の規定を満たす場合、大臣は出願を認容する。 (2)出願が認容された場合、大臣は出願人または代理人に当該出願が特許を付与される旨書面をもって通知する。 |
インドネシア特許法 第62条 (1)審査官が特許出願された発明が第54条の規定を満たさないと報告した場合、大臣は出願人またはその代理人に対して書面により当該規定の要件を満たすよう通知する。 (2)(1)項における通知は以下を含む: (a)充足されるべき要件;及び (b)実体審査において用いられる理由と引用文献 (3)出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書を提出しおよび/または通知書に記載される要件を満たさなければならない。 (4)~(8)(略) (9)(3)項、(4)項、(5)項および/または(8)項にいう期間内に出願人が意見を表すも通知書に記載される規定の要件を満たさない場合、大臣は、書面で出願人に対し2か月以内に出願は拒絶される旨通知する。 |
インドネシア特許規則 第7条 1特許出願は,1発明に対してのみすることができるという規定を遵守して,(次のように出願を分割することができる。) (a)既になされた特許出願は,当該特許出願が 2 以上の発明を包含することが判明した場合は,2以上の出願に分割することができる。 (b)(a)にいう分割により生じた各特許出願は,別個の出願としてすることができ,当該特許出願に対しては,当初の特許出願の受理の日と同一の特許出願の受理の日を付与することができる。 |
インドネシア特許規則 第8条 (1)第7条にいう特許出願の分割は、特許局に対して書面でなされるものとする。 (2)(1)にいう特許出願の分割出願は、当該特許出願に対して実体審査が行われて既に終了している場合は、拒絶される。 |
日本とインドネシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
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日本 |
インドネシア |
分割出願の 時期的要件 |
1.補正ができる時または期間 (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く) (ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内 (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内 (iv)拒絶査定不服審判請求と同時
2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く) (i)前置審査における特許査定 (ii)審決により、審査に付された場合における特許査定
3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内
4.不責事由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、2.または3.の期間の経過後6月以内 |
1.出願から(特許または拒絶)査定の発行まで |
■ソース
1. 日本特許法(平成30年5月30公布(平成30年法律第33号)改正)2. インドネシア特許法(2016年法律第13号改正)
3. インドネシア特許規則(1991年6月11日政令第34号改正)
■本文書の作成者
創英国際特許法律事務所■協力
AFFA Intellectual Property Rights(インドネシア知的財産法律事務所)日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2019.02.25