アジア / 法令等 | 出願実務 | アーカイブ
日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2019年10月08日
■概要
(本記事は、2023/9/21に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37344/
日本と中国の特許の実体審査においては拒絶理由通知への応答期間が異なる。具体的には、日本では実体審査において60日(在外者でない場合)または3月(在外者の場合)の応答期間が設定されているのに対し、中国の実体審査においては最初の拒絶理由通知書であるか再度の(2回目以降の)拒絶理由通知書であるかにより応答期間が異なる。また、日本と中国とでは、延長可能な応答期間の長さが異なる。
■詳細及び留意点
<日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長>
1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1(2)アa意見書、2(2)アa意見書
・日本特許法 第50条(拒絶理由の通知)
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
・日本特許法 第17条の2第1項(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の
補正)
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
・日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1(2)アa意見書、2(2)アa意見書
1 手続をする者が在外者でない場合
(2)指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条*3、商15条の2*4、15条の3第1項、商附則7条*5)
2 手続をする者が在外者である場合
(2)指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条*3、商15条の2*4、15条の3第1項、商附則7条*5)
*3 特50条:特67条の4、意19条において準用
*4 商15条の2:商65条の5、67条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用
*5 商附則7条:商附則23条
2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3月まで延長可能
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
・日本特許法 第5条第1項(期間の延長等)
特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。
・日本特許庁 方式審査便覧 04.10 1(4)ア、2(4)イウ
1 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
イ.特許法第67条の4の規定による意見書の提出についての指定期間は、「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる。
ウ.上記2(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。又、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
<中国の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長>
1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・1回目の拒絶理由通知書の場合、応答期間は4月
・2回目の拒絶理由通知書の場合、応答期間は2月
条文等根拠:専利法第37条、専利審査指南第2部分第8章4.10.3、専利審査指南第2部分第8章4.11.3.2
※専利法とは日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。実施細則とは日本における特許法施行規則に相当。審査指南とは日本における特許審査基準に相当
・中国専利法 37条
国務院専利行政部門は、発明特許出願に対して実体審査を行った後、本法の規定に合致していないと認める場合、出願者に通知を行い、指定の期限内に意見を陳述するか、あるいはその出願を修正するよう要求する。正当な理由なく期限を過ぎても回答しない場合、当該出願は撤回されたものと見なされる。
・中国専利審査指南第2部分第8章4.10.3 応答期限
審査官は審査意見通知書において、応答期限を指定しなければならない。当該期限は、審査官が出願に関連している要素を考慮した上で確定する。これらの要素には、審査意見の数と性質、出願で補正となり得る作業量及び複雑さなどがある。1回目の審査意見通知書の応答期限は4ヶ月である。
・中国専利審査指南第2部分第8章4.11.3.2 2回目の審査意見通知書の内容及び要求
1回目の審査意見通知書の作成方式及び要求は同様に2回目の審査意見通知書にも適用する。
審査意見通知書への応答において、出願人が補正書類を提出した場合には、審査官は補正書類に対して審査意見を提示し、新たに補正された権利要求書及び説明書にある問題点を指摘しなければならない。
出願人が応答において意見を陳述しただけで、出願書類については補正していない場合、通常審査官が2回目の審査意見通知書の正文において、前に述べた意見を堅持してもよいとする。ただし、出願人が充分な理由を提示した、又は本章第4.11.3.1節に述べたような状況があった場合には、審査官は新たな審査意見を考えなければならない。
審査官は2回目の審査意見通知書において、出願人が提出した意見陳述書における弁明意見について必要なコメントをしなければならない。
審査手続を加速させるために、2回目の審査意見通知書では出願に対する審査の結論を出願人に明確に告知しなければならない。2回目の審査意見通知書で指定される応答期限は2ヶ月である。
2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が正当な理由により期限内に拒絶理由通知書に対して応答することができない場合は、最大2月まで延長が可能。延長は一般的には1回のみとなっている。
条文等根拠:専利法実施細則第6条第4項、専利法実施細則第99条第2項、専利審査指南第5部分第7章4.2
・中国専利法実施細則第6条第4項
当事者より国務院特許行政部門が指定した期限の延長を申請する場合は、期限の満了日までに国務院特許行政部門に理由を説明し、且つ関係手続きを取らなければならない。
・中国専利法実施細則第99条第2項
期限延長請求費は相応する期限満了日前に納付しなければならない。期限が満了になっても未納付又は納付不足の場合は、請求を提出しなかったと見なす。
・中国専利審査指南第5部分第7章4.2 期限延長請求の許可
期限延長の請求について、対応した通知と決定を行った部門、又は手続管理部門が審査許可を行う。
延長期限が1ヶ月未満である場合は、1ヶ月として計算される。延長期限は2ヶ月を超えてはならない。同じ通知又は決定において指定された期限について、許可される延長は一般的に1回のみとする。
期限延長の請求で規定に合致しない場合、審査官は延長期限審査許可通知書を出し、期限延長しない理由を説明しなければならない。規定に合致した場合は、審査官は延長期限審査許可通知書を出し、コンピュータシステムにおいて当該期限の満了日を変更して、当該期限の監視を継続しなければならない。
日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | 中国 | |
応答期間 | 60日(ただし在外者は3月) | 1回目の拒絶理由通知書:4月
2回目の拒絶理由通知書:2月 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 可 |
延長可能期間 | 最大2月
(在外者は最大3月) |
最大2月 |
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2018.12.20