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(中国)地名を含む商標に関する判断

2012年10月09日

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■概要
商標法第10条第2項によれば、中国における県クラス以上の行政区画の地名又は公知(*)の外国地名は、(1)その地名が別の意味を有する場合、(2)地名が団体商標、証明商標の一部になっている場合、(3)商標に地理的表示が含まれているが、既に登録されている場合(以下、「既に登録されている地理的表示を用いた商標」という。)のいずれかに該当する場合を除き、商標として使用してはならず、商標登録することができない。また、審査基準によれば、商標文字の内容が中国における県クラス以上の行政区画の地名又は公知の外国地名とは異っていても、字形、称呼が類似し、公衆に当該地名であることを誤認させる可能性があり、商品の生産地に関して混同を生じさせるものは、悪い影響を有するものとして、商標法第10条第1項第8号により拒絶される。
(*)日本における「公知」は、「公衆に知られ得る状態」で可とされるが、ここでいう「公知」とは「実際に公衆に知られている蓋然性が高い」程度の意味を有するため、日本における「公知」とは意味が異なる。
■詳細及び留意点

(1)商標法第10条第2項

(i)定義

(a)中国における県クラス以上の行政区画の地名とは

 「県クラス以上の行政区」には、(a)県クラスである県、自治県、県クラスの市、市管轄の区、(b)地区クラスである市、自治州、地区、盟、(c)省クラスである省、直轄市、自治区、(d)香港特別行政区と澳門特別行政区、(e)台湾地区が含まれる。県クラス以上の行政区の地名は民政部(中国語「中华人民共和国民政部」)により編集/出版された「中華人民共和国行政区画簡冊(中国語「中华人民共和国行政区划简册」)」を基準とする。

 

 ここにいう県クラス以上の行政区の地名は全称、略称および県クラス以上の省、自治区、直轄市、省都、計画単列市、著名な観光都市の表音文字を含む。

 

(b)「公知の外国地名(中国語「公众知晓的外国地名」)」とは

 中国の公衆に知られている中国以外の国家、地域の地名を指す。地名には全称、略称、外国語名称、外国語名称の中国語訳語も含まれる。

 

(c)「地名が別の意味を有する」とは

 地名が言葉として確定の意味を持ち、かつその意味が地名としての意味よりも影響が強く、公衆に誤認を生じさせないことを指す。

 

(d)「既に登録されている地理的表示を用いた商標」とは

 1983年施行商標法には地名を含む商標に関する禁止条項はなく、1993年施行商標法で、初めて当該条項が商標法に追加された。そのため、1993年以前に既に登録されている地理的表示を用いた商標は、法改正の経過措置の適用を受けて引き続き有効である。

 たとえば、第122945号「南京」(出願日:1978年1月6日、存続期限:2003年3月1日~2013年2月28日)、第147486号「雲南」(出願日:1980年11月26日、存続期限:2003年3月1日~2013年2月28日)などは、上記状況に該当する。

 

(ii)地名を含む商標に関する判断

(a)県クラス以上の行政区画を含む地名商標

 商標が県クラス以上の行政区画の地名により構成され、又は県クラス以上の行政区画の地名を含む場合、県クラス以上の行政区画の地名と同一であると判断され、その商標出願は登録できない。下記はその例である(いずれも審査基準記載の例である)。

出願番号:第3574502号

出願番号:第3574502号
(上海は直轄市である)

 

 

 

 

 

 

出願番号:第3582736号

出願番号:第3582736号
(新疆は新疆ウイグル自治区の略称である)

 

 

 

 

 

(b)公知の外国地名を含む商標

 外国地名については、「公知の外国地名(あるいはそのような地名を一部に含む商標)」に限り、商標登録できない。実際に、異議申立により登録されることはなかったが、「青森」、「山梨勝沼」など日本の地名を含む商標が予備的審査を経て公告になっていたということがある。これは、「青森」、「山梨勝沼」などの地名が日本人にとっては公衆に知られている地名であるものの、中国の審査官にとっては、「公知の外国地名」ではないと判断された結果であると考えられる。

 

  • 商標が公知の外国地名により構成され、又は商標に公知の外国地名が含まれる場合、公知の外国地名と同一であると判断され、その商標出願は登録できない。下記はその例である。

出願番号:第1988724号(審査基準記載の例である。)

出願番号:第1988724号(審査基準記載の例である。)
出願人:建平松林集団有限公司
指定商品:ビールなど
イツの首都ベルリンの中国語「柏林」と同じであり、登録できない。

(以下は中国商標網の公開情報から任意に検索したものである。)

出願番号:第3037217号

出願番号:第3037217号
出願人:台州市陽光装飾材料有限公司
指定商品:非金属建築材料など
日本首都「東京」は中国人にとって公知の外国地名である。

出願番号:第3249244号

 出願番号:第3249244号
出願人:広州市鑫典包装設計有限公司
指定商品:新鮮な果物、新鮮な野菜など
日本の「青森県」の名前と同じである。異議申立によりその登録は阻止された。

 出願番号:第5657925号

出願番号:第5657925号
出願人:徐大為
指定商品:焼酒、葡萄酒、酒(飲料)、ビールを除くアルコール飲料など
日本の「山梨県」の県名を含む。異議申立によりその登録は阻止された。

 

(c)地名が別の意味を有する商標

  • 地名が別の意味を持ち、且つその意味は地名としての意味より影響が強い場合は、商標法第10条第2項の規定は適用されない。「黄山」は中国安徽省のクラスの市であるが、世界文化遺産でもあり、有名な自然景観であることから、下記例(審査基準記載の例)では同項は適用されなかった。

登録番号:第3265160号

 

 

 

 

登録番号:第3265160号
商標権者:安徽両面針・芳草日化有限公司

  • 商標が地名とその他の文字により構成されて全体として顕著な特徴を有し、又はその他の意味を有し、公衆に商品の出所につい誤認を生じさせない場合は、商標法第10条第2項の規定は適用されない。下記はその例(審査基準記載の例)である。

登録番号:第1968877号

登録番号:第1968877号
商標権者:安徽古川貢酒股分有限公司
指定商品:蒸留酒
民国年代の上海を背景とし、上海の分派人物の愛情、恨み物語を演じる有名な香港ドラマの名前であるが、出所について誤認を生じさせないと判断された。

登録番号:第3126435号

登録番号:第3126435号
商標権者:倫敦霧(中国)有限公司
指定商品:かばん、傘など
ロンドンの霧は一種の自然現象であるため、出所について誤認を生じさせないと判断された。

  • 商標が省、自治区、直轄市、省都、計画単列市、著名な観光都市以外の地名の表音文字で構成され、かつ公衆に商品の生産地に関して混同を生じさせない場合は、登録が可能である。下記はその例(審査基準記載の例)である。

 登録番号:第1911624号

登録番号:第1911624号
商標権者:泰星減速機股分有限公司
指定商品:伝動装置(机器)
「TAI XING」は江蘇省泰興市の表音文字と同じであるが、出願人名称に含まれる「泰星」の表音文字でもあった。

登録番号:第984296号

 

 

 

 

 

 

登録番号:第984296号(更新されなかったため現在は無効となっている)
商標権者:四川祥和珠宝有限公司
指定商品:自転車
「XIANG HE」は河北省香河県の表音文字と同じであり、出願人名称に含まれる「祥和」の表音文字でもあった。

 

(d)商標に含まれる地名が出願人の所在地を真実に表明する場合

  • 商標に含まれる地名とその他の顕著な特徴を持つ標識とは相互に独立し、地名は出願人の所在地を真実に表明する役割だけを果たすものである場合、商標法第10条第2項の規定は適用されない。下記はその例(審査基準記載の例)である。

登録番号:第G756261号

 

 

 

 

 

登録番号:第G756261号
商標権者:SYLVIE JESSUA
住所:11,quai de la Gironde,F-75019 PARIS

 

  • 出願人の名称に地名が含まれており、出願人がその全称を商標として登録出願する場合、商標法第10条第2項の規定は適用されない。また、一部の特別業界、出願人の略称を商標として登録を出願する場合も登録が認められる。下記はその例(中国商標網の公開情報から任意に検索したもの)である。

登録番号:第6554803号

登録番号:第6554803号
商標権者:東京製綱株式会社
指定商品:金属ひもなど

登録番号:第6781141号

登録番号:第6781141号
商標権者:株式会社名古屋銀行
指定役務:銀行など

登録番号:第3780828号

 

 

 

登録番号:第3780828号
商標権者:東京電力株式会社
指定役務:電気の供給など

  • 商標が二つ又は二つ以上の行政区の地名の略称により構成され、公衆に商品の生産地への誤認を生じさせない場合、商標法第10条第2項の規定は適用されない。下記はその例(審査基準記載の例)である。「豫」は中国河南省の別称であり、「晉」は中国山西省の別称であるが、「豫晋」は出願人の名称と一致している。

登録番号:第1322544号

登録番号:第1322544号(更新されなかったため現在無効となっている)
商標権者:聞喜県豫晋磷肥廠
指定商品:肥料

(e)地名が団体商標、証明商標の一部となっている場合

 地名が団体商標、証明商標の一部となっている場合は、商標法第10条第2項は適用されない。下記はその例(中国商標網の公開情報から任意に検索したもの)である。

登録番号:第3327697号

 

 

 

 

(「南京」は江蘇省の地区クラスの市である。)
登録番号:第3327697号
商標権者:南京市雲錦研究所
指定役務:織物、室内装飾用品織物

登録番号:第6049534号

 

 

 

 

(「煙台」は山東省の地区クラスの市である。)
登録番号:第6049534号
商標権者:煙台苹果協会
指定商品:リンゴ

登録番号:第6908995号

 

 

 

 

 

(「加州」は、アメリカのカリフォルニア州の略称である。)
登録番号:第6908995号
商標権者:CALIFORNIA MILK PRODUCERS ADVISORY BOARD
指定商品:ミルク

 

(2)商標法第10条第1項第8号

  • 商標の文字の内容が、中国における県クラス以上の行政区画の地名又は公知の外国地名とは異なるが、字形、称呼が類似し、公衆に当該地名であることを誤認させる可能性があり、商品の生産地に関して混同を生じさせるものは、悪い影響を有するものとして、商標法第10条第1項第8号により拒絶される。下記例(審査基準記載の例)では、日本の「札幌」と字形、称呼が類似しているとして同項同号により拒絶された。

出願番号:第1739180号

 

 

 

出願番号:第1739180号
出願人:国営南通ビル廠
指定商品:果実酒(アルコール含み)、焼酒、葡萄酒、酒(飲料)など

 

  • 商標に含まれる地名が出願人の所在地と一致しないものであって、公衆に誤認させる恐れのあるものは、悪い影響を有するものとして、商標法第10条第1項第8号により拒絶される。下記例(審査基準記載の例)では、「NEW YORK」、「PARIS」という表記が含まれることから同項同号により拒絶された。

出願番号:第3018363号

出願番号:第3018363号
出願人:北京盛世傑服装服飾有限公司

 

【留意事項】

 商標法第10条第2項に定められている「公知の外国地名」は、実務上、中国の公衆に知られている中国以外の国家、地域の地名であると解釈されている。その国の者によく知られている外国地名であっても、その外国地名が中国の公衆に知られていなければ、ここにいう「公知の外国地名」に該当しないので注意を要する。また、地名を含む商標については、第10条第2項だけではなく第10条第1項第8号の要件も考慮する必要がある。

 そして、中国商標局(中国語「商标局」)の商標公告のウォッチングを強化し、日本の地名を含む商標が公告になった場合、速やかに異議申立、取消審判を行うことが重要である。その場合、異議申立の理由としては、中国国内の新聞雑誌において当該地名が使用されている事実の証明が有力であるが、その他、インボイスや原産地表示がなされた商品の中国国内流通を証明する書類等で、当該地名が原産地表示がなされた商品の輸入実績などを証明すること等も考えられる。

 さらに、中国輸入の可能性のある商品に係る原産地名を含む団体商標等について早期の出願を検討することも重要である。

■ソース
・中国商標法
・商標審査基準(第1部分第11章 地名を含む商標の審査)
・中国商標局ウェブサイト
http://sbcx.saic.gov.cn/trade/index.jsp
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 川瀬幹夫
一般財団法人比較法研究センター
■本文書の作成時期

2012.09.14

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