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(中国)マルチマルチの従属クレームへの対応

2012年10月09日

  • アジア
  • 出願実務
  • 特許・実用新案

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■概要
中国では、マルチマルチの従属クレーム(複数クレームを引用する多項従属クレームが、他の複数クレームを引用する多項従属クレームを引用すること)は認められていない。日本語原文明細書をベースに中国出願用明細書を作成する際にマルチマルチの従属クレームが存在する場合、当該従属クレームの引用関係について、出願時補正と、出願後補正という2つの対応時期がある。各対応時期のメリットとデメリットは以下の通りである。
■詳細及び留意点
  • 2つ以上の複数クレームを引用する多項従属クレームは、他の多項従属クレームを引用することができない(専利法実施細則第22条)。

例:請求項3…請求項1、2に記載の○○(請求項3は請求項1及び2に従属する多項従属クレームである)。

  請求項4…請求項1~3のいずれかに記載の○○(請求項4は請求項1~3に従属する多項従属クレームである)。

このような場合、多項従属クレームである請求項4は、その従属先の請求項3も多項従属クレームであるため、マルチマルチの従属クレーム(中国語「多项引多项」)に該当する。

  • なお、中国では、従属クレームは、前のクレーム(中国語「权利要求」)のみを引用することができる。

例:請求項2は請求項1にのみ従属でき、請求項3に従属してはならない。

 

 マルチマルチの従属クレームをどのようにすれば解消し得るかについては、専利法、実施細則や審査基準に規定されていないが、実務上、マルチマルチの従属クレームの引用関係を以下の時期に補正することによって対応している。

 

(1)出願時補正

(i)メリット

  • 出願時に補正すれば、実体審査(中国語「实质审查」)においてマルチマルチの従属クレームに関する拒絶理由(中国語「审查意见」)が出されないため、マルチマルチの従属クレームに関する拒絶理由通知書(中国語「审查意见通知书」)の発行、それに対する出願人の応答、その応答に対する中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)の審査に費やす時間を省くことができ、その出願にそれ以外の不備がない場合、早期権利化を期待することができる。ただし、実務上、審査官が拒絶理由を出さずに特許査定をすることはあまりなく、出願時にマルチマルチの従属クレーム違反を解消したとしても、審査官は他の理由で拒絶理由を出すのが一般的である。つまり、出願時マルチマルチの従属クレームの引用関係を補正したとしても、拒絶理由の回数が減ることはあまり期待できない。

 

(ii)デメリット

  • マルチマルチの従属クレームを回避するためには、その引用先のクレームの数を減らす(発明の形態を減らす)方法もあるが、どの発明の形態がなくてもよいかが、出願時には分からない(発明を実施しているうちに分かる)場合がある。したがって、出願時にこの方法で対応する場合、有用な発明の形態を削除してしまい、その結果、権利の保護が不十分になる可能性がある。例えば、中国最高人民法院の「特許権紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈」(中国語「关于审理侵犯专利权纠纷案件应用法律若干问题的解释」)(2010年1月1日施行)には、権利者が侵害訴訟(中国語「侵权诉讼」)を提起する時及び侵害訴訟の裁判中に、独立クレームまたは従属クレームをもって権利を主張することができると規定されている。したがって、出願時に、マルチマルチの従属クレーム違反を回避するために多くの発明の形態が削除され、権利行使のときに権利者にとって不利になる可能性がある。
  • また、マルチマルチの従属クレーム違反を解消するために一部の従属先を削除すれば、実質上、一部の発明を削除することとなる。パリルート出願の場合、出願時にこの方法によりマルチマルチのクレーム違反を解消すれば、無効審判(中国語「无效宣告请求」)において組み合わせ方式の補正(複数のクレームを一つにする)に問題が出てくるおそれがある。具体的には、たとえ審査指南に規定される「補正の方式」(審査指南第4部分第3章4.6.2)の要件を満たしていたとしても、組み合わせ後の発明が当初の出願書類に記載されていないため、補正は新規事項追加(中国語「修改超范围」)となるという問題がある(専利法第33条)。

 

(2)出願後補正

(i)メリット

  • 出願後の実体審査請求時、または中国特許庁から「実体審査開始通知書」を受け取った日から3ヶ月以内に、マルチマルチの従属クレームの引用関係を自発補正(中国語「主动修改」)により解消することができる。その際に、発明の実施状況や対応する他の国での審査結果がある程度分かるようになり、出願人はどの発明の形態が有用なのかを十分に確認した上で自発補正を行うことができる。
  • 自発補正をせずに、実体審査段階で審査官からの拒絶理由に応答する際に補正することもできる。具体的には、拒絶理由に基づいて特許性無しの形態を削除し、特許可能な形態をすべて残すことも考えられる。

 

(ii)デメリット

 実体審査の段階で、マルチマルチの従属クレーム違反に係る拒絶理由を受けることになり、他の不備が全くない場合に、拒絶理由通知書の回数が増えるデメリットがある。ただし、前述(1)(i)で述べたように、他の理由で拒絶理由を受ける可能性がある。

 

(3)特許登録後のマルチマルチの従属クレームの扱い

 また、マルチマルチの従属クレームは、実施細則により禁止されているが、無効理由とはなっていない。そのため、審査時にマルチマルチの従属クレームに関する拒絶理由が出されず、そのまま登録になった場合、特許登録後にこのようなクレームが見つかったからといって無効になることはない。

 

【留意事項】

 出願時にマルチマルチの従属クレームの引用関係を補正することは、出願人に実質的なメリットをもたらすことがあまりない(拒絶理由通知の回数を減らすことがほとんどできない)が、多くのデメリットがある。一方、出願後に補正する場合、明らかなデメリットがなく、しかも出願前に補正する場合のデメリットを回避することができる。したがって、原則として、マルチマルチの従属クレームの引用関係については、出願時に補正せず、出願後、発明の実施状況や対応する他の国での審査結果がある程度分かる段階で補正した方がよいと思われる。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・専利審査指南
・中国最高裁判所の特許権紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 中国専利代理人 梁煕艶
一般財団法人比較法研究センター
■本文書の作成時期
2012.09.18
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