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中国における商標の色彩の判断

2012年10月09日

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■概要
(本記事は、2021/5/27に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19956/

中国では、商標は「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」とに分けられる。また、複数の色の組合せのみから成る模様的な「色彩の組合せ商標」も商標の一種として出願することができる。
■詳細及び留意点

(1) 色彩商標の種類

(i)「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」

商標登録出願をする場合、公表された商品及び役務分類表に基づき、分類毎に出願しなければならない。商標登録出願は一件毎に、「商標登録願書」一部、商標見本5部、色彩を指定する場合、着色見本5部、白黒見本1部を提出しなければならない(商標法実施条例第13条1項)。

また、実務上、商標を出願する際、商標登録願書には、当該商標は、普通商標か色彩商標かを明記する必要がある。色彩(颜色)を指定しない商標を出願する場合、「普通(一般)」の欄を選択する必要がある。

商標登録出願願書(中国語)

商標登録出願願書(中国語)

商標登録出願願書(和訳)

商標登録出願願書(和訳)

 

A.色彩を指定しない商標(モノクロ商標、白黒商標)と、B.色彩を指定する商標の例は次のとおりである。なお、下記はいずれも中国商標網の公開情報から任意に検索したものである。

 

A.色彩を指定しない商標

B.色彩を指定する商標

 

(ii)色彩の組合せ商標

上記「色彩を指定しない商標」と「色彩を指定する商標」とは別に、色彩の組合せのみから構成される商標がある。「色彩の組合せ商標」とは、二種類又は二種類以上の色のみにより構成される商標を指す。なお、「色彩の組合せ商標」とは、複数の色の組合せのみから成る模様的なものを言い、文字、図形を含むものは色彩を付していても「色彩の組合せ商標」に属さず、色彩を指定する商標に属することとなる。

実際には、「色彩の組合せ商標」は、自他商品識別力を有すると判断される可能性が低く、中国では、出願件数と登録件数とは共に非常に少ないのが現状である。以下は登録の一例である。

 

(2) 審査時の商標類否判断における色彩の役割

中国では、色彩は審査時の商標類否判断の主な要素ではなく、以下に示す2点が商標類否判断の主な要素とされる。

(i)中国商標審査基準によれば、商標における外国語、アルファベット、数字の部分が同一または類似し、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、類似商標と判断される。下に示す商標(審査基準に掲載された例)は、色彩における差異はあるが、商標におけるアルファベット同一であるため、類似商標と判断された。

 

例1:

(ii)中国商標審査基準によれば、商標における図形の部分が類似し、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、類似商標と判断される。下に示す商標(審査基準に掲載された例)は、色彩における差異はあるが、商標における図形部分が同一であるため、類似商標と判断された事例である。

 

例2:

 

(3) 色彩の組合せ商標の審査

 (i)方式要件

色彩の組合せ商標を出願する際、出願人は願書で色彩組合せ商標である旨を説明しなければならない。当該説明がない場合は、カラーの図面が提出されたとしても、色彩の組合せ商標として審査されない。また、出願人は、明瞭なカラーの図面を提出し、且つ色番号(色見本のコードを指す。一例として、米国の「Pantone」色コード等)を明記しなければならない点にも注意が必要である。

 

(ii)実体要件

色彩の組合せ商標も一般の商標と同様に、商標法第10条に反するものは商標登録されない。また、A.識別力の審査 と B.色彩の組合せ商標の同一・類似の審査がある。

 

A. 識別力の審査

色彩の組合せ商標は、単に指定商品の自然の色だけのもの、商品自体又は包装物及び役務の場所に通常的に用いられる色により構成されるもの、及び出願人が色彩の組合せについて文字の説明だけを行いカラーの図面を提出しなかったものは、識別力を欠くと判断される。以下は、識別力なしの例である(いずれも審査基準に記載の例である)。

 

例1:指定商品の自然の色だけから成るもの

(指定商品:からし粉)

(指定商品:からし粉)
識別力なしの例1

 

 

 

 

例2:指定商品自体又は包装物及び役務の場所に通常的に用いられる色だけを有するもの

(指定役務:美容院)

(指定役務:美容院)
識別力なしの例2

 

 

 

 

 

B. 色彩の組合せ商標の同一・類似の審査

色彩の組合せ商標の同一・類似の審査には、色彩の組合せ商標間の審査、及び色彩の組合せ商標と平面商標・立体商標との間の審査が含まれる。

 

(a)色彩の組合せ商標間の同一・類似の審査

二つの色彩の組合せ商標を比べ、その組合せの彩色と配列の方式が同一又は類似し、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、同一又は類似商標と判断される。ただし、使用する彩色が違うもので、又は、同一若しくは類似する彩色を使用したが配列・組合せの方法が違うもので、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがないものは除く。

 

例1:類似商標とされるもの

類似商標とされるもの

例2:類似商標とはされないもの

類似商標とはされないもの

例3:同一又は類似商標とはされないもの

同一又は類似商標とはされないもの

 

(b)色彩の組合せ商標と平面商標・立体商標との間の同一、類似の審査

色彩の組合せ商標が、平面商標の図形又は立体商標の指定色と同一又は類似し、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、同一又は類似商標と判断される。 ただし、同一又は類似する彩色を使用したが、全体的効果が明らかに違うものであって、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがないものは除く。

 

例4:同一又は類似商標とされるもの

同一又は類似商標とされるもの

例5:同一又は類似商標とはされないもの

同一又は類似商標とはされないもの

 

(4) 色彩商標の効果

中国では、色彩を指定しない商標(即ちモノクロ商標)が登録されたら、色を変えて使用しても、登録商標の使用として認められている。一方、色彩を指定する商標が登録されたら、色を変えて使用することは、登録商標の使用には該当しない。もし、その色を変えて使用した登録商標にRマークをつけた場合、登録商標を許可なく変更した行為に該当し、中国商標局が、商標法第44条1項に基づき、期間を定めて是正を命じ又はその登録商標を取り消すことがあり得る。

 

【留意事項】

文字、図形等より成り、これに色彩を付して使用する平面商標の商標登録出願に際して、色彩を指定するか、色彩を付さずにモノクロで出願するかは、検討を要するところである。

中国では、商標を構成する要素のうち、「色彩」は、文字、図形等に比して軽視されている。したがって、色彩を指定しないモノクロ商標は、どのような色彩を付して使用されても「登録商標の使用」と認められ、また文字、図形が類似している商標は、色彩の如何にかかわらず類似とされる。これに対し、色彩を指定した商標は、色を変えた商標との類似関係は生ずるものの、色を変えた商標の使用は「登録商標の使用」とは認められない。

従って、色彩を指定しない登録商標は、どのような色彩を付して使用しても「登録商標の使用」なので、「不使用取消」を免れるが、色彩を指定した登録商標は、異なる色彩を付して使用しても「不使用取消」を免れないこととなる。

付する色彩との関係で自他商品識別力の認められる特殊な場合(例えば、ナショナルカラーとの関係から特定の色が必須とされるケースや特定の色彩の使用により顕著性を主張するようなケース等)を除き、自由に色彩を付して使用するために、モノクロ商標出願が望まれる。

■ソース
・中国商標法
・中国商標法実施条例
・商標審査基準(第五部分 色彩の組合せ商標の審査)
・中国国家行政管理総局商標局ウェブサイト申請書式
http://sbj.saic.gov.cn/sbsq/
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 弁理士 川瀬幹夫
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期

2012.08.29

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