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中国語明細書が外国語明細書の範囲を超えており誤訳とされ得る場合の例

2012年10月09日

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■概要
台湾では外国語出願をおこなうことが可能である。台湾専利審査基準において、(1)中国語明細書と外国語明細書の間の関係が不明確な場合、(2)外国語明細書から過度に上位概念化した翻訳をおこなった場合、(3)中国語明細書に記載の技術内容に矛盾がある場合、(4)中国語明細書に記載されている用語が外国語明細書の技術分野と完全に異なる場合、(5)中国語の技術内容に常識に反する不合理な記載がある場合、(6)中国語明細書の用語とそこに記載されている技術内容が完全に一致していない場合などに誤訳の可能性があり、誤訳である場合は訂正のための補正が必要とされている。
■詳細及び留意点

 台湾において、特許出願の審査は基本的に中国語の明細書等に基づくとされているが、台湾専利法第25条第4項に基づき、出願時に外国語明細書等を合わせて提出している場合、外国語明細書等に基づき誤訳訂正のため補正することが可能である。ここで、補正内容が外国語明細書等の範囲内であり誤訳を原因とするものであれば、外国語明細書等の提出日が新規性・進歩性の判断基準となる出願日として認められる。

 

 その際に、中国語明細書等が外国語明細書等の内容を超えているかどうかが重要となるが、台湾の専利審査基準第2篇第6章1.4.3では以下のような例が記載されている。

 

「(1)中国語明細書と外国語明細書の間の関係が不明確であるか、中国語明細書の内容が全体として不明確であるか、一般的な技術常識に反する場合、多くの場合原文の語句の誤訳か文脈を無視しているか文法的な間違いの結果であろうが、中国語明細書が外国語明細書の範囲を超えるとされる。

(2)外国語明細書の原文にある技術手段を中国語に翻訳していなかった場合、通常は中国語明細書は外国語明細書の範囲を超えるとは認められない。例えば、外国語の特許請求の範囲において上位概念の技術的特徴Aが開示されており、その下位概念の技術的特徴であるa1、a2、a3及びa4がその実施例とされているが、a4が中国語明細書に翻訳されていなかった場合、このような形は外国語原文の範囲を超えるとはされない。しかし、外国語明細書に照らして単純化し過ぎる翻訳については注意が必要であり、外国語明細書の範囲を超えるとされることがあり得る。例えば、外国語明細書中に特定の記載として「熱絶縁ゴム」と記載されていたが、「ゴム」一般にかかる記載がなかったにもかかわらず、中国語の翻訳をおこなう際その意味を完全に翻訳せず「ゴム」と単純化して翻訳した場合、「ゴム」の意味は「熱絶縁ゴム」に比べて広く、このような誤訳の結果として外国語明細書の範囲を超えるということがあり得る。

(3)中国語明細書に記載の技術内容に矛盾がある場合、誤訳の結果であり得ることについて留意すべきであり、外国語明細書の範囲を超えることになり得る。例えば、外国語明細書中に「「A與B脫離(disconnected)(日本語訳「AとBが分離する」)」と書かれていたが、中国語への翻訳の際に、語頭の「dis」を見逃し、「A與B結合(connected)(日本語訳「AとBが結合する」)」と誤訳してしまったような場合である。

(4)中国語明細書に記載されている用語が外国語明細書の技術分野と完全に異なる場合、誤訳の結果であり得ることについて留意すべきであり、外国語明細書の範囲を超えることになり得る。例えば、「beam」は「樑(日本語「梁(はり)」)」あるいは「光束」と翻訳することができるが、外国語明細書の技術内容を見てその意味が「光束」を指しているならば、中国語で「樑」とするのは誤訳である。

(5)中国語の技術内容に常識に反する不合理な記載がある場合、誤訳の結果であり得ることについて留意すべきであり、外国語明細書の範囲を超えることになり得る。例えば、外国語明細書に記載されている技術内容から、その意味が、直径の異なる「第1の1つの円板」及び「他の1つの円板」を用いて、同じ中心位置に穿孔をおこない、貫通孔を有する小円板と未貫通孔を有する大きな円板を重ねて作るということであり、その穿孔の結果、1つの貫通孔が形成されるのみであることが発明の技術分野に属する当業者に明確に理解できるが、中国語の記載では2つの円版は異なる位置に孔が開けられ、2つの異なる貫通孔が形成されるとなっている場合である。

(6)中国語明細書の用語とそこに記載されている技術内容が完全に一致していない場合、誤訳かタイプミスの結果であり得ることについて留意すべきであり、外国語明細書の範囲を超えることになり得る。例えば、外国語明細書に記載されているある構成材料が「polyvinyl chloride(聚氯乙烯)(日本語「ポリ塩化ビニル」)」であるが、中国語の訳は「氯乙烯(日本語「塩化ビニル」)」であった場合、外国語明細書の正しい意味及び発明の属する技術分野の当業者による中国語明細書の技術内容に基づき、中国語明細書が明らかなタイプ漏れであることを判断できる。

(7)中国語明細書が外国語明細書の字句の順序を変えたが、外国語明細書に開示されていない事項を含まない場合、外国語明細書の範囲を超えないと認められ得る。

(8)外国語文法において名詞の前に「a」、「an」、「ein」、「eine」、「einen」、「un」、「une」等がつくことがあるが、その意味として不定冠詞として用いられているに過ぎず数量を表すものでない場合、それらを中国語の翻訳において省略してよく、このような場合の中国語明細書は外国語明細書の範囲を超えるとされない。

ここであげられている(1)~(6)の場合において、中国語明細書等の内容が外国語明細書等の範囲を超える場合、新たに翻訳を作成し、中国語明細書等の内容が外国語明細書等の範囲を超えないようにするべきであるとされている。」

 

 なお、この審査基準であげられているような誤訳のパターンは発生しやすいものであり、翻訳の際にはこのようなパターンに注意しておくことが望ましい。

 

参考(台湾専利審査基準第2篇第6章1.4.3より):

 中文本超出外文本範圍之判斷原則舉例如下:

(1)中文本與外文本對照時兩者關係不明確,或中文本整體內容意思不清楚,或與一般通常知識相反時,極可能是誤譯了原文詞句或疏忽了上下文的關係或因文法上錯誤的結果,導致中文本超出外文本之範圍。

(2)外文本原有部分技術手段未翻譯成中文時,通常不認為中文本超出外文本之範圍,例如:外文本申請專利範圍中揭露上位概念技術特徵A,而以下位概念技術特徵a1,a2,a3以及a4為其實施例,但a4未翻譯載入中文本說明書中,這種情形不構成超出外文本之範圍。然而,必須注意的是過於簡化的翻譯,在對照原來的外文本時,可能會發覺超出了外文本範圍的情形,例如:在外文本中有一特定記載「熱絕緣橡膠」,但並無記載其係意指一般「橡膠」,然而於翻譯成中文本時未完整翻譯其本意而簡譯成「橡膠」,由於「橡膠」之涵義較「熱絕緣橡膠」為廣,這種誤譯的結果將構成超出外文本之範圍。

(3)翻譯錯誤使中文本所記載之技術內容產生矛盾時,應注意可能是因為誤譯之結果,導致產生超出外文本範圍之情形。例如:在外文本中係敘述「A與B脫離(disconnected)」,於翻譯成中文本時忽略了字首「dis」,而誤譯成「A與B結合(connected)」。

(4)中文本所記載之用語完全與外文本之技術領域不同時,應注意可能是因為誤譯之結果,導致產生超出外文本範圍之情形。例如:「beam」可譯成「樑」或「光束」,由外文本所記載之技術內容觀之,其本意應是指「光束」,但中文本卻誤譯成「樑」。

(5)中文本之技術內容有反常不合理之敘述時,應注意可能是因為誤譯之結果,導致產生超出外文本範圍之情形。例如:在外文本所記載之技術內容,其本意為以不同直徑之「第一個圓」及「另一個圓」,其均在相同的圓心位置處鑽孔,可形成重疊之較小穿透圓及較大未穿透圓,該發明所屬技術領域中具有通常知識者由外文本技術內容瞭解其鑽孔之結果,僅會形成一個穿透的洞;然而中文本卻記載為該兩個圓係在不同位置鑽孔,因而形成兩個不同的穿透的洞。

(6)中文本之用語與本身所記載之技術內容不完全相符,應注意可能是因為誤譯或打字錯誤之結果,導致產生超出外文本範圍之情形。例如:外文本說明書記載某構成材料為polyvinyl chloride(聚氯乙烯),而中文本卻譯為「氯乙烯」,基於外文本之真正本意以及該發明所屬技術領域中具有通常知識者依據中文本之技術內容,可判斷中文本可能係明顯打字遺漏。

(7)中文本說明書改變了外文本之句子順序,但不包含未揭露於外文本之事項時,可以認為未超出外文本的範圍。

(8)外文語法中名詞前面之「a」、「an」、「ein」、「eine」、「einen」、「un」、「une」……等,若其本意僅是不定冠詞之運用而非數量之表示時,將其省略未翻譯成中文,這種情形之中文本不構成超出外文本之範圍。

上述所列舉(1)至(6)之情形,若中文本之內容產生超出外文本範圍之情形時,應重新翻譯,使其內容不致超出外文本。

 

【留意事項】

台湾においても外国語出願を用いれば外国語明細書等に基づく誤訳を理由とした補正を行うことができる。ただし、台湾専利審査基準においてあげられているような、翻訳漏れ、過度の上位概念化、用語の見間違え、同音同形異義語、技術的不理解、タイプミス、単数冠詞の直訳等は誤訳の原因としてよくあるものであり、このような誤訳のパターンに気をつけて翻訳することが望ましい。

■ソース
台湾専利審査基準第2篇第6章
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■協力
聖島国際特許法律事務所
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期

2012.09.02

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