アジア / 出願実務
韓国における商標出願に対する情報提供
2018年10月30日
■概要
他人の商標出願に対する情報提供は自然人または法人を問わず誰でも行うことができ、情報提供者には審査結果および提供された情報の活用の有無が通知される。また、商標は出願後、通常2~3週間以内に公開されるため、出願検索を適切に行えば模倣商標を出願後すぐに発見することができ、情報提供制度を使って、登録となることを防ぐことができる。さらに、情報提供制度は、出願公告後の異議申立や登録後の無効審判に比べて、手続面でも費用面でも大変効果的であるといえる。■詳細及び留意点
(1)情報提供ができる者
他人の商標出願に対する情報提供は自然人または法人を問わず誰でも行うことができる(商標法第49条)。
実在する個人または法人の名前で行う必要があるため、会社名や事務所名を出したくない場合は、所属する社員の個人名等で行うことは可能であるが、情報提供者の名前を省略することはできない。
(2)情報提供ができる時期
当該商標登録出願の商標登録査定(韓国語「등록결정(登録決定)」)(商標法第68条)または商標登録拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)(商標法第54条)がなされる前までである。
(3)情報提供の理由および提出物
情報提供の理由は、韓国商標法第54条の各号に定める登録拒絶理由と同一である。該当する理由を明示し、登録拒絶理由の存在を証明することができる証拠と共に提出しなければならない(商標法第49条)。
例えば、自身の商標の模倣出願が出願された場合、国内外の需要者間に自身の商品を表示する商標であると認識されていることを示す証拠資料を共に提出すればよい(商標法第34条第1項第13号)。
(4)提出先および提出方法
特許庁にオンラインまたは郵送で提出が可能である。特許庁または特許庁ソウル事務所に直接持参してもよい。
(5)情報提供者への通知
審査官は、出願公告または意見提出通知等第一次審査決定をする前に情報提供がある場合には、出願人に出願公告決定または拒絶理由通知(韓国語「의견제출통지(意見提出通知)」)と同時に、情報提供者にも審査結果および提供された情報の活用の有無を通知する。
第一次審査決定以降に提出された情報提供に対しては、最終審査が終結する時点において、審査結果および提供された情報の活用の有無を情報提供者に通知する。ただし、情報提供がある出願に対する最終審査結果が第一次審査結果と異なる場合には、変更した旨を情報提供者に通知する。
(6)情報提供書類の閲覧
情報提供書類の閲覧は情報提供者のみ可能である。
【留意事項】
(1)異議申立および無効審判には印紙代が必要となるが、情報提供には印紙代は不要である。また、異議申立および無効審判は異議決定や審決までに長期間要することになるが、情報提供は商標審査時にすぐに反映され、模倣商標を短期間内に防止することができるというメリットがあるため、登録されるべきでない他人の登録を防ぐために上手く利用することが望ましい。
参考までに、特許庁の報道資料(2011年4月4日)によれば、最近6年間の衣料、履物、帽子等ファッション分野の商標出願に対する情報提供に関して、情報提供によって模倣商標の登録が拒絶される比率(72.2%)は異議申立によって拒絶される比率(43.8%)や登録された模倣商標が無効となる比率(41.7%)よりも30%程度も高く、情報提供が異議申立や無効審判よりも模倣商標を防止するのに効果的な制度と判断される、としている。
(2)商標出願は、出願後6ヶ月程度で審査が着手されるため、他人による模倣商標出願の防止のためにも、随時、商標出願検索を行う必要がある。他人の商標についての検索は、韓国特許庁傘下の特許情報院のホームページ(http://eng.kipris.or.kr/eng/main/main_eng.jsp)で検索可能である。通常、出願後2~3週間以内に公開され、英語で検索することもできる。
■ソース
・韓国商標法・商標・意匠審査事務取扱規程
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2018.02.08