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マレーシアにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務
2017年06月15日
■概要
マレーシアの審査段階では、クレームに記載された方法が新規性、進歩性ならびに産業上の利用可能性を有するか否かにかかわらず、クレームに記載された製品自体が新規性、進歩性ならびに産業上の利用可能性を有する場合にのみ、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの使用が認められる(物同一説)。一方、権利行使段階で、プロダクト・バイ・プロセスクレームがどのように解釈されるかについて裁判所の判断基準は確立されていない。■詳細及び留意点
1. 審査段階(特許取得時)
マレーシア知的財産公社(MyIPO)発行の特許審査ガイドラインによれば、マレーシアにおいて、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、一定の状況下、例えばクレームされている製品が、特定の方法によって得られる製品として特徴づけられる化合物である場合等に認められ、またクレームされている製品が新規性および進歩性(かつ、おそらくは産業上の利用可能性)の要件を満たす場合にのみ認められる。
なお、上記ガイドラインによれば、新たな方法で製造されたことのみをもって新規の製品であるとはみなされない。プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、クレームに記載された方法が新規性、進歩性ならびに産業上の利用可能性を有するか否かにかかわらず、クレームに記載された製品自体が新規性、進歩性ならびに産業上の利用可能性を有する場合にのみ認められることが、ガイドラインから明らかである。
製造方法によって規定される製品のクレームは、「製品」のクレームとして解釈され、当該クレームは、好ましくは、「方法Yにより得られる製品X(Product X obtained by process Y)」ではなく、「方法Yにより得ることができる製品X(Product X obtainable by process Y)」またはこれと同等の文言から成る形式を取るべきである。
2. 権利行使段階(特許取得後)
権利行使段階におけるプロダクト・バイ・プロセスクレームの解釈については、1983年マレーシア特許法にも1986年マレーシア特許規則にも規定がないため、裁判所がプロダクト・バイ・プロセスクレームを審査段階と同様に製品自体の特徴にのみ基づいて解釈するのか、あるいは、クレームに記載された方法によって製造された製品であるかどうかという点も考慮して解釈するのか、いまだ裁判所の判断基準は確立されていないというのが現状である。
■ソース
1983年マレーシア特許法1986年マレーシア特許規則
マレーシア知的財産公社(MyIPO)発行の特許審査ガイドライン
■本文書の作成者
Shearn Delamore & Co (マレーシア法律事務所)■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.02.14