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シンガポールにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務
2017年05月23日
■概要
シンガポールにおいては、審査段階(登録前)および権利行使段階(登録後)のいずれにおいても、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、特定の条件を満たす発明についてのみ認められ、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、製法により限定された生産物ではなく、生産物自体に関するクレームとして解釈される。有効なプロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利行使は、生産物クレームの権利行使と同じ一般原則に従う。■詳細及び留意点
1. 審査段階(登録前)
シンガポールにおいて、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、生産物の構造が知られておらず、かつ、当該生産物が、組成、構造、性質または特徴により適切に定義することができない発明についてのみ認められる。これは、その特徴または組成の観点において定義することができない生物学的生産物またはポリマーに適用される(シンガポール知的財産庁(英語:「IPOS」)審査ガイドライン(以下、「ガイドライン」)のパラグラフ2.73)。
しかし、一般に、特許出願におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームは、製法により限定された生産物ではなく、生産物自体に関するクレームとして解釈される。
以下に、ガイドラインのパラグラフ2.74を記載する:
ガイドライン パラグラフ2.74:製法により得られる生産物に関するクレーム
「製法Yにより得られるまたは調整される生産品X」は、
「得られた(英語「obtained」)」、「得ることができる(英語「obtainable」)」、「直接得られた(英語「directly obtained」)」、またはその他同様の文言が使用されているか否かにかかわらず、生産物自体に関するクレームとして解釈するべきである(Kirin-Amgen Inc v. Hoechst Marion Roussel Ltd [2005] RPC :これは、欧州特許庁の法律、すなわち、審決T 150/82 International Flavors and Fragrances Inc. [1984] 7 OJEPO 309を支持する)。
この点において、プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける生産物自体の構成(製法の特徴によってもたらされた組成、構造、性質または特徴)が先行技術に開示されているとみなされる場合、当該クレームは新規性が欠如するものと判断される。
さらに、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは生産物自体と区別できないため、特許または特許出願が生産物クレームを有し、その分割出願が同一生産物に関するプロダクト・バイ・プロセス・クレームを有する場合には、両出願の間に重複した主題があることとなる。したがって、調査および審査の過程において二重特許に基づく拒絶が提起される。
2. 権利行使段階(登録後)
上記ガイドラインのパラグラフ2.74から、特許におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームは、製法により限定された生産物ではなく、生産物自体に関するクレームとして解釈される。したがって、製法の新規性により、生産物に新規性を付与することはできない。
したがって、
(a)プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける生産物の新規性が欠如する場合、当該クレームは無効である;しかし、
(b)生産物が特許性の要件を満たし、かつ、その組成、構造またはその他の検証可能なパラメータを参照して適切に定義することができない場合、そのようなプロダクト・バイ・プロセス・クレームは有効となると推定される。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、生産物クレームとして解釈されるため、有効なプロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利行使は、生産物クレームの権利行使と同じ一般原則に従う。
First Currency Choice v. Main-line Corporate Holdings Pte Ltd (2008) 1 SLR 335から、これら一般原則は、まず、登録された独占権の範囲を判断するためのクレーム全体の目的論的解釈に関わり、その後、被疑侵害品がクレームのすべての必須の特徴を含むか否かの判断が行われる。
さらに、既知の生産物は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームにより保護されないが、製法自体が特許可能であると推定される場合には、製法クレームとして保護が可能であり、当該方法から直接得られた生産物は自動的に保護されることとなる。
■ソース
・シンガポール知的財産庁(IPOS)における特許出願審査ガイドライン・シンガポール特許法
・Alban Kang Isabel ChngおよびSimon Seow著、「シンガポールにおける特許法ガイド」(Sweet & Maxwell、2009年)
・テレルの特許法第18版(Sweet & Maxwell、2016年)
■本文書の作成者
Drew & Napier (シンガポール法律事務所)■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2017.02.17