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シンガポールにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明

2016年05月26日

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■概要
シンガポール特許法において、「発明」は定義されていない。特許法第13条(1)では、特許を受けることができる発明は、(a)発明が新規である、(b)発明に進歩性がある、(c)発明が産業上利用できる、という条件を満たすものであると規定されている。特許法では、ごく限られた特許性の具体的例外しか規定されていない。ある種の主題における特許適格性については不明瞭なままである。
■詳細及び留意点

【詳細】

1. ソフトウェア

 1995年に特許法が施行された際に、第13条(2)によって「コンピュータプログラム」は、「発明」ではないと宣言された。

 

シンガポール特許法第13条(1995年施行時)では以下のように発明を規定していた。

「第13条 特許性のある発明

(1) (2)および(3)に従うことを条件として、特許性のある発明とは、次の条件を満たすものである。

 (a)発明が新規であること

 (b)発明に進歩性があること

 (c)発明が産業上利用できること

(2) 次のものから成るものは、本法を目的として、発明ではないことをここに宣言する。

 (a) 発見、科学的理論、数学的方法

 (b) 言語、戯曲、音楽または芸術作品、もしくはその他あらゆる審美的創作物

 (c) 精神活動、ゲームまたはビジネスのためのスキーム、ルールまたは方法、もしくはコンピュータプログラム

 (d) 情報の提示

ただし、前述の規定は、特許または特許出願に関する範囲内において、あらゆるものが本法における発明として取り扱われることを禁止するものである。」

 1996年1月1日に施行された改正により、第13条(2)は削除された。

 

 ソフトウェアクレームが特許を受けることができるかどうかを考察するために、First Currency Choice v Main-Line Corporate Holdings Ltd事件([2007] SGCA 50)を説明する。この事件において、クレジットカード取引を処理するために使用される希望通貨を、(データ処理方法を通じて)自動的に特定する通貨換算方法およびシステムに対して特許を付与することが適切かどうかが争点となった。最高裁判所の高等法廷(High Court)は、この特許は新規性と進歩性を有さないと判示し、この判決は、最高裁判所の上訴法廷(Court of Appeal)によって支持された。

 

 第13条(2)の削除とFirst Currency Choice v Main-Line Corporate Holdings Ltd事件の判決に基づき、シンガポールにおいてソフトウェアクレームは特許を受けることができるとの見解を持つ者がいるが、シンガポール知的財産庁は、この見解を認めていない。シンガポール知的財産庁の特許出願審査ガイドライン(以下、「知財庁ガイドライン」という)の段落8.5および8.6は、以下の通りである。

 「8.5 しかし、特許法は特許規則と合わせて解釈されなければならず、特許規則第19条によれば、発明が関連する「技術分野」および「技術的課題」を明細書で特定し、クレームは、「技術的特徴」として発明を定義しなくてはならない。

 8.6 したがって、規則第19条に定められた要件に鑑みて、発明は「技術的特徴」を含むことが要件である。」

 

2. 治療方法

 第16条(2)は、人もしくは動物の体の外科術または治療術による治療方法、または人もしくは動物の体について行う診断方法の発明は、産業上利用可能であるとは認められないと規定している。したがって、そうした発明は、特許不適格である。

 しかし、この除外は、人または動物の体について行う外科術、治療術または診断の方法にのみ適用される。

 第14条(7)は、第16条(2)により除外された治療方法において使用される既知の物質または組成物の場合、当該物質または組成物が技術水準の一部を構成するという事実は、当該物質または組成物の当該方法における使用が技術水準の一部を構成しないときは、発明を新規なものと認めることを妨げるものではないと規定している。

 第16条(2)および第16条(3)と合わせた第14条(7)の解釈に基づき、知財庁ガイドラインは、段落8.38において、以下の通り説明している。

 「したがって、既知の化合物の『第一医療用途』はクレーム可能であり、または、医療用途として従前に知られている物質または化合物の場合は、異なる『第二医療用途』がクレーム可能である。」

 

 知財庁ガイドラインの段落8.39において、認められる「第一医療用途クレーム」について例が示されている。

 (1)治療において使用される化合物X

 (2)薬品として使用される化合物X

 (3)健康状態Yの治療において使用される化合物X

 (4)抗生物質として使用される化合物X

 

 知財庁ガイドラインの段落8.42において、以下の「第二医療用途」クレームの形式が認められると述べられている。

 (1)健康状態Yの治療のための薬品の製造における化合物Xの使用 ― スイスタイプクレームの一般的形式

 (2)健康状態Yの治療または予防措置用の薬品を製造するための化合物Xの使用

 (3)健康状態Yの治療における使用指示とともにパッケージされる抗Y剤の製造における化合物Xの使用

 (4)健康状態Yの治療または予防のための使用準備が整った医薬形態の抗Y剤の調整における化合物Xの使用

 

2-3 特許を受けることができないその他の主題

 第13条(2)は削除されたが、知財庁ガイドラインは(パラグラグ8.7~8.25において)、以下のものを、特許を受けることができない主題として列記している。

 (1)発見

 (2)科学的理論および数学的方法

 (3)審美的創作物(言語、戯曲、音楽または芸術作品)

 (4)精神活動の遂行、ゲームの実行または事業の実施のための計画、規則または方法

 (5)情報の提示

■ソース
・シンガポール特許法(チャプター221)
・シンガポール特許規則
・シンガポール知的財産庁における特許出願の審査ガイドライン
・First Currency Choice v Main-Line Corporate Holdings Ltd [2007] SGCA 50
■本文書の作成者
DREW & NAPIER LLC (シンガポール特許事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期

2016.3.1

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