アジア / 出願実務
フィリピンにおける分割出願に関する留意点
2016年06月01日
■概要
フィリピンでは、出願人は、自発的にまたは庁指令に応じて分割出願を行うことができる。分割出願の時期的要件および実体的要件を説明する。また、分割出願の審査請求期限、分割出願からの分割出願の可否、親出願との二重特許についても説明する。■詳細及び留意点
【詳細】
1.自発的な分割出願
自発的な分割出願は、親出願が取り下げられるか、または特許が付与される前であればいつでも行うことができる。特許に関する改正施行規則規定(IRR)の規則611では、自発的な分割出願が以下のように規定されている。
「規則611 自発的な分割出願
出願人は、親出願が取り下げられる前か、または特許が付与される前に、係属中の出願に基づき自発的に分割出願を行うことができる。ただし、分割出願の内容は親出願の内容を超えてはならない。
自発的な分割出願は、親出願と同じ出願日が付与され、優先権の利益が得られる。(以下、省略)」
2.庁指令に応じて行う分割出願
フィリピン知的財産権局(IPOPHL)の局長は、発明の単一性を満たさない出願に対して単一の発明に限定するよう要求する庁指令(限定要求)を発することができる。限定要求に応じて、出願人は分割出願をすることができるが、その分割出願は限定要求が確定した(*)日から4か月以内に行わなければならない。限定要求に応じて行う分割出願については、IRRの規則604に以下のように規定されている。
「規則604 発明の単一性
(a)出願は、一の発明または単一の発明概念を形成する一群の発明に関連しなければならない。(フィリピン知的財産法(IP法)第38条1)
(b)単一の発明概念を形成しない複数の独立した発明が一の出願においてクレームされている場合、局長は、当該出願を単一の発明に限定するよう要求することができる。分割した発明についてなされる後の出願は、最初の出願と同日に出願されたものとみなされる。ただし、分割の要求が確定した後4か月以内、または4か月を超えない範囲で認められる追加期間内に、後の出願がなされることを条件とする。更に、各分割出願は、当初の出願における開示の範囲を超えてはならない。(IP法第38条2)」
(*)出願人は限定要求に対して、理由を挙げて、その再考を請求することができる。再考の結果、限定要求が繰り返された場合には、当該限定要求は確定する。(IRR規則606)
3.分割出願における審査請求の期限
IP第44条によれば、分割出願は、実体審査段階の手続に入る前に、IPOPHLの公報において公開される。IP法第48条に基づき、公開から6か月以内に、出願人は書面による実体審査の請求をしなければならない。出願人が6か月以内に実体審査の請求をしなかった場合、分割出願は取り下げられたものとみなされる。
4.更なる分割出願
一つの親出願から複数の分割出願(子出願)を行うことができる。ただし、フィリピンにおける実務では、これら複数の分割出願は全て、親出願の係属中に行わなければならず、分割出願(子出願)から更なる分割出願(孫出願)を行うことは認められていない。
5.分割出願のクレーム範囲および二重特許に関する問題
IRRの規則604および611に従い、分割出願のクレーム範囲は、親出願に開示される範囲、すなわち、親出願の出願時の内容を超えてはならない。
親出願と同一のクレームを含む分割出願は、原則として上記の要件には違反しない。ただし、フィリピンでは、二重特許、すなわち、一つの発明に対して二つの特許を同一の者に付与することは認められていないので、親出願のクレーム範囲と同一範囲のクレームを含む分割出願を行っても、これらの親出願と分割出願の審査は並行して進めることはできない。
したがって、分割出願のクレーム範囲は、親出願のクレーム範囲と重複しないようにすべきである。もし親出願と同一のクレームで分割出願が行う場合には、親出願との二重特許の問題を避けるために、親出願のクレームを補正する必要がある。
■本文書の作成者
E.B.ASTUDILLO & ASSOCIATES(フィリピン法律事務所)■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2016.03.02