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インドにおける特許出願の補正の制限

2016年05月31日

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■概要
インドにおいて、特許出願書類の補正は、自発的な補正と非自発的な補正の2つに分類することができる。この2種の補正は特許出願後から特許が有効である間いつでも行うことができる。本稿では、インドにおける補正の制限について考察する。
■詳細及び留意点

【詳細】

1.はじめに

 インドにおいて、特許出願書類の補正は、自発的な補正と非自発的な補正の2つの分類することができる。これらの補正は特許出願後から特許が有効である間いつでも行うことができる。なお、本稿において、別段の定めがない限り、「特許出願書類」には完全明細書および特許出願に関連する文書が含まれる。

 ここで、インド特許法では、仮明細書を添付する場合(仮出願)と、完全明細書を添付する場合(本出願)の2つの出願様式が認められており(インド特許法第7条(4))、上記完全明細書とは、本出願に添付される明細書を意味する。なお、仮出願は、簡易化された出願手続により優先日を確保することにより、主として研究成果などについて特許による早期の権利保護を図るための制度で、米国の仮出願制度や、日本の国内優先権出願制度に類似した制度である。

 

2.非自発的な補正

 非自発的な補正とは、特許庁長官が要求する補正のことで、出願人が特許庁から特許出願書類の補正を求められる状況としては、次のような場合がある。

 (1)長官が、出願審査後に特許出願がインド特許法の要件を遵守していないと判断した場合。この場合、長官は、出願人に対し補正を要求する(インド特許法第15条)。出願人がその補正を行わない場合、長官は当該特許出願を拒絶することができる。

 (2)分割出願がなされた場合で、長官が、クレームされている主題が重複しないよう親出願または分割出願の補正を求める場合(インド特許法第16条)。

 (3)長官が、クレームされた発明がすでに公開されているものであると認めた場合。この場合、長官は、出願人に対し、完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第18条)。

 (4)特許出願に開示されている発明を実施しようとした場合に、他の特許のクレームを侵害する虞があると、長官が認め、かつ、出願人が当該他の特許についての言及を特許出願に含めることを拒む場合。この場合、長官は、出願人に対し完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第19条)。

 

3.自発的な補正

 出願人はインド特許法第57条に基づき、特許出願書類を自発的に補正する機会を有している。自発的な補正を行うにあたっては、所定の特許庁費用とともにForm13による補正申請書をインド特許庁に提出する必要がある。補正申請書には、その補正案の内容および当該申請の理由を記載する必要がある。長官はその裁量によりインド特許法第57条に基づき補正を拒絶もしくは許可すること、または適切と認める条件を付して補正を許可することができる。ただし、特許権侵害訴訟または特許取消手続が高等裁判所に係属している間は、補正申請を拒絶または許可することはできない。

 特許付与後に提出された補正申請は、その内容が本質的なものである場合には、インド特許庁により公開される。「利害関係人」は、補正申請の公開後3カ月以内に当該補正に異議を申し立てることができる。インド特許法第2(t)条によれば、「利害関係人」には、当該発明に係る分野と同一の分野における研究に従事し、またはこれを促進する者を含む。補正に対して異議申立がなされた場合、長官は出願人にこれを通知し、決定を下す前に出願人と異議申立人の両方に対し聴聞の機会を与える。補正に対する異議申立手続は、特許の異議申立手続と同じである。特許付与後に提出された補正が許可された場合も、公報に公開される。

 

4.審判部または高等裁判所における明細書の補正

 知的財産審判部(Intellectual Property Appellate Board:IPAB)または高等裁判所における特許無効手続において、特許権者は、自己の完全明細書の補正許可を申請することができる。IPABまたは高等裁判所は、適切と認める条件を付した上で特許権者の申請を許可できる。Solvay Fluor GmBH v.E.I. Du Pont de Nemours and Company事件(2010年6月4日決定第111/2010号)において、IPABは「出願人が補正理由の詳細を十分に提示しない場合」には、補正許可の申請を却下可能であるとの決定を下している。

当該補正許可申請の通知は、手続上特許庁長官に対しても発せられ、補正を許可する内容のIPABまたは高等裁判所の命令の写しは、当該命令がなされた後に長官に送付され、長官は特許登録簿への登録を行う。なお特許の発行後に、長官、IPABまたは高等裁判所により特許の補正が許可された場合、次のようになる。

 (1)当該補正は明細書の一部を構成するものとみなされる。

 (2)明細書その他の関連書類が補正されたという事実はできる限り速やかに公表される。

 (3)出願人または特許権者の補正請求の権利に対しては、詐欺を理由とする場合を除きその有効性を争ってはならなくなる。

 

5.特許出願書類の補正の制限

 インド特許法第59条は、特許出願書類の補正に対する制限を定めており、「権利の部分放棄、訂正もしくは説明以外の方法によって一切補正してはならず,かつ,それらの補正は事実の挿入以外の目的では,一切認められない」と規定している(なお、「それらの補正は事実の挿入以外の目的では、一切認められない」とは、補正の目的が、誤りを訂正することに関係したものでなければならないということを意味していると考えられるが、この点の解釈を争った判例がないのが実情である)。また補正の範囲についても、新規事項を追加するような補正は認められず、また、クレームの範囲を拡大するような補正も認められない。また異議または審判の手続中の補正に関しても、M/s. Diamcad N.V. v. Mr. Sivovolenko Sergei Borisovish事件(2012年8月3日決定第189/2012号)において、知的財産審判部(IPAB)は、「インド特許法第58条および第59条は、異議または審判の手続中に、認可された特許クレームを、最初に認可されたクレームの保護範囲を拡大するような方法で補正することはできないことを要求するものであるとしている」との判断を下している。

 

6.結論

 上述の通り、インド特許法第59条は、認められる補正の内容および範囲を制限するものである。よって、後の段階になって補正を行う必要がないように、明細書作成の時点で、完全なものとしておくことが極めて重要である。

■ソース
インド特許法
■本文書の作成者
Remfry & Sagar (インド法律事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2016.02.05
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