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ロシアにおける指定商品または役務に関わる留意事項
2016年05月11日
■概要
ロシア特許庁(ROSPATENT)は、ニース協定に基づく「商品およびサービスの国際分類」(国際分類)の第10版を採用している。指定商品または指定役務を記述する場合、国際分類表の類見出し(クラスヘディング)または国際分類表に記載された特定の商品もしくは役務または国際分類表に記載されていない商品もしくは役務を用いることが認められている。ただし、類見出し(クラスヘディング)のみでは、当該分類全体が登録されたものとは解釈されない。■詳細及び留意点
【詳細】
ロシア連邦民法第Ⅳ部(商標法を含む)の規定
ロシア連邦民法第Ⅳ部第1497条は、「商標出願の審査期間中に、出願人は、出願資料を補足、解明または訂正する権利を有する。」と規定している。とはいえ、出願日の時点で願書に記載されていなかった商品または役務が補足資料に含まれていた場合や、商標が著しく変更されていた場合、それらの補足資料は審査対象とはならない。出願人は、そのような新たな商品または役務や変更された商標に関しては、別個の新規出願を行わなければならない。
国際分類
ROSPATENTは、ニース協定に基づく「商品およびサービスの国際分類」(国際分類)の第10版およびWIPOが提供している注釈ガイドラインを採用している。最新版の公式なロシア語訳は、ROSPATENTのウェブサイトで公開されている。
審査基準
指定商品または指定役務を記述する場合、国際分類表の類見出し(クラスヘディング)または国際分類表に記載された特定の商品もしくは役務または国際分類表に記載されていない商品もしくは役務を使用もしくは併用することが認められている。
商品または役務を指定するにあたって類見出し(クラスヘディング)の使用が認められているが、商標登録の権利範囲は、指定商品および指定役務と正確に合致する商品または役務に限定される。したがって、類見出し(クラスヘディング)だけでは、その分類に属する商品または役務をすべて網羅することはできないため、類見出し(クラスヘディング)のみから成る指定商品または指定役務による登録商標は、ROSPATENTによってもロシアの裁判所によっても、当該分類全体が登録されたものとは解釈されない。
国際分類表に記載されていない商品または役務を記述することは認められているが、そのような記述を用いた場合、審査官から補正指令を受ける可能性があり、出願人が選択した当該商品もしくは役務の分類に審査官が同意しない可能性もある。
指定商品もしくは指定役務が公定出願料に及ぼす影響
ロシアでは、1件の出願で複数の分類を指定することが可能である。商品もしくは役務は正確に分類され、それぞれの分類が明示されていなければならない。出願人が支払う公定出願料は、出願において指定された分類の数によって異なる。公定出願料は、商品もしくは役務の数ではなく、分類の数に応じて支払われなければならない。出願人が特定の分類の中だけに含まれる商品もしくは役務をひとつだけ指定するか、複数指定するかによって、公定出願料に差が生じることはない。
現在、出願時に支払われる公定出願料は、指定商品もしくは指定役務の分類がひとつの場合には14,200ルーブルであり、出願に指定された分類がひとつ増えるごとに2,050ルーブルが加算される。
(参考)ロシア特許庁費用計算一覧
上記のように、出願に指定された分類の数は、支払うべき公定出願料に影響するが、公定登録料および公定更新出願料に関しては、分類の数によって変動することはない。
提言
指定商品または指定役務を明瞭に、そして十分具体的に記述することを推奨する。審査官から補正指令を受けるリスクを最小限に抑えるためには、国際分類表に記載されている記述を使い、国際分類表に記載されていない記述はできるだけ避けることが重要である。さらに、指定商品または指定役務が、ROSPATENTの審査基準に適合していることを確認するため、出願に先立って現地の弁護士もしくは弁理士に事前に相談することが望ましい。
■ソース
ロシア連邦民法第Ⅳ部
■本文書の作成者
Baker & McKenzie - CIS, Limited
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2015.12.22