アジア / 出願実務 | アーカイブ
中国における優先権書類の提出方法―デジタルアクセスサービス(DAS)について
2012年08月21日
■概要
(本記事は、2022/1/4に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/21331/
出願人の優先権書類提出の便宜を図り、審査の効率を向上させるために、2012年3月1日よりデジタルアクセスサービス(Digital Access Service、以下「DAS」という)が利用可能となりました。DASとは、各国特許庁との協力に基づきWIPO国際事務局により構築・管理されている、電子的交換により優先権書類が入手可能となるサービスのことです。
中国以外のDASの参加国(例えば、日本特許庁)における第一国出願を優先権主張の基礎として中国へ出願する際に、第一国出願の出願人は、WIPOのDASを利用して優先権書類データを取得するよう中国国家知識産権局(SIPO)に請求することができます。SIPOがDASを利用して優先権書類を取得することは、出願人による中国特許法第30条の規定に基づく優先権書類の提出と見なされます。つまり、出願人は、DASを利用してもよいし、紙ベースによる優先権書類の提出という従来の方法を利用してもよいということになります。
■詳細及び留意点
DASを利用した優先権書類の提出手順を紹介します。
(1)出願人は、取得請求すべき優先権書類を、第一国出願の受理官庁(例えば、日本特許庁)によりDASへ提供します。(日本特許庁に対する手続に関しては、日本特許庁ウェブサイトの案内
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/das_ver1.htm、http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/wipo_via_ver3.htm
をご覧下さい。)
(2)出願人は、WIPO国際事務局のウェブサイト
https://webaccess.wipo.int/priority_documents/en/へアクセスし、WIPOが管理する「アクセス管理リスト」において優先権書類の取得を許可する国の特許庁として、中国国家知識産権局(SIPO)を設定します。
(3)出願人は、中国現地代理事務所に新規出願を依頼する際、代理事務所に対して当該出願に係る優先権書類をDASへ提供してSIPOに取得の許可を与えたことを説明し、DASを通じて優先権書類を提出する旨を指示するとともに、下記の情報を提供する必要があります。
(a)先願の受理官庁
(b)先願の出願番号
(c)先願の出願日
(d)先願の出願人
(e)先願の発明者
(4)代理人事務所は、新規出願を提出する際、又は出願日から3ヶ月以内に、DASを利用して優先権書類データを取得するようにSIPOに請求します。
【留意事項】
1.適用対象及び条件
(a)出願日が2012年3月1日及びその後に提出した外国優先権 (例えば、日本国優先権) を主張する特許出願または実用新案出願でなければなりません。また、現在、意匠出願については、DASの利用はできません。
(b)優先権の基礎となる出願がPCT国際出願である場合は、対象外です。
(c)優先権主張の基礎となる出願の受理官庁はDASの提供庁でなければなりません。
2012年9月現在、DASの参加庁は、オーストラリア、スペイン、フィンランド、英国、米国、WIPO、日本、韓国、中国、スウェーデン、デンマークです。そのうち、スウェーデン、デンマークは提供庁としてのみ参加しており、優先権書類の取得庁ではありません。
2.DASを利用する場合に必要な事前準備
中国現地代理事務所が中国特許庁へDASを請求するに際して、出願人側は、次の事前準備を完了しておくことが必要です。すなわち、対象出願(優先権主張の基礎出願)について、その受理庁(例えば、日本特許庁)へアクセスコードの付与を請求し、WIPOのDASウェブサイトで中国特許庁を優先権書類の取得を許可する国の特許庁(取得庁)として設定しておく必要があります。
3.先願の出願人と中国の出願人が不一致の場合
先願の出願人と中国の出願人が一致しておらず、例えば、後願の出願人の全部または一部が先願の出願人でない場合、後願の出願人は中国特許法の規定に従って優先権譲渡証明書を提出する必要があります。
4.DASによる優先権書類の提出期限
DASを利用して優先権書類を提出する期限は、紙ベースによる提出の期限とは同一であり、いずれも出願日から3ヶ月以内です。
5.DASの取得請求が失敗した場合
DASを利用して優先権データを取得するのに失敗した場合、「優先権書類の入手可能な証明書(CERTIFICATE OF AVAILABILITY OF A CERTIFIED PATENT DOCUMENT IN A DIGITAL LIBRARY)」をSIPOへ提出する必要があります。それは、WIPOのウェブサイトから優先権書類の入手可能であることを証明するためのものです。なお、提出期限はSIPOから指定があります。
■ソース
・中国特許庁(SIPO)ウェブサイトhttp://www.sipo.gov.cn/pdoc/das/ DASについての紹介 (中国語)
・日本特許庁ウェブサイト
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/das_ver1.htm デジタルアクセスサービス[DAS]利用登録について
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/wipo_via_ver3.htm 世界知的所有権機関を経由した優先権書類データの電子的交換(デジタルアクセスサービス)について
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/wipo_ver1.htm 世界知的所有権機関を通じた優先権書類の電子的交換
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/das_faq.htm デジタルアクセスサービス[DAS]についてのQ&A集
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター■本文書の作成時期
2012.08.07