アジア / 出願実務
タイにおける特許分割出願
2016年04月12日
■概要
タイ特許法B.E. 2522(1979)は、出願人が自発的に分割出願を行うことを認めていない。出願人が分割出願を行うことができるのは、審査官が拒絶理由通知により出願を分割するよう指示した場合に限られる。審査官が分割を指示した場合、出願人はその拒絶理由通知の受領から180日以内に分割出願を行わなければならない。特許法B.E. 2522(1979)第26条に従い、分割出願は最初の出願の出願日になされたものと見なされる。■詳細及び留意点
【詳細】
分割出願の根拠は、発明の単一性に関する法理に由来する。ゆえに発明の単一性に関連する規定をまず検討すべきである。
○発明の単一性
発明の単一性はタイにおける特許付与の要件の一つである。特許法B.E. 2522 (1979)第18条に基づき、特許出願は単一の発明もしくは単一の発明概念を構成する関連性のある発明の一群を対象とするものでなければならない。
実体審査請求がなされた後、審査官は審査ガイドラインの第4.1項に基づき当該出願が単一の発明もしくは単一の発明概念を構成する関連性のある発明の一群を対象としているか審査しなければならない。発明の単一性を判断する際、審査官は独立クレームを検討する。
○分割出願
審査の過程で、出願が単一の発明概念を構成せず、関連性を持たない複数の異なる発明に係ると判断された、すなわち発明の単一性が満たされない場合、審査官は拒絶理由通知を発行し、その出願を個々の発明に分割するよう出願人に通知する。つまり、特許法B.E. 2522(1979)第26条第1項に従って分割出願を行うよう指示するのである。上述のように、この指示は実体審査段階でなされる。
拒絶理由通知を受領した出願人がこれに同意し、当該の通知受領から180日以内に分割出願の申請を行った場合、特許法B.E. 2522(1979)第26条第2項に従い、当該分割出願の出願日は最初の出願の出願日とみなされる。
特許法 B.E. 2522(1979)第26条第3項に従い、分割出願に適用される手続や料金は通常の出願と同じとなる。
なお、出願人が拒絶理由通知によって指示された分割出願に同意しない場合、特許法B.E. 2522(1979)第26条第4項に従い、出願人は当該通知の受領から120日以内に審査官の認定に対する不服審判請求を長官に提出することができる。
なお、特許法B.E. 2522(1979)には、出願人が自発的に分割出願を行うことを認める規定はない。
○まとめ
前述したように、タイにおいて自発的に分割出願を行うことは不可能である。出願人が分割出願を行うことができるのは、審査官から指示された場合のみである。分割出願には最初の出願の出願日が与えられること、また特許期限を延長することはできないので、分割が指示された場合、出願人は可及的速やかに分割出願を行うべきである
自発的に分割出願は行えないが、当該出願に対応する外国特許で分割出願が指示されたものがあれば、その審査結果を提出することによりタイでの分割出願を試みることは可能である。とはいえ、発明の単一性の欠如は特許無効事由にならないため、対応外国特許での認定に基づき分割出願の提出を出願人に指示するよう審査官に促す上記の方法は推奨できない。それにより特許付与が遅れる結果になりがちだからである。
■ソース
・特許法B.E. 2522(1979)・特許審査ガイドライン
■本文書の作成者
Satyapon & Partners Ltd.■協力
日本技術貿易株式会社■本文書の作成時期
2015.02.23