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インド特許法 第8条<対応外国出願に関する情報開示義務>の解釈に関する判例

2015年01月26日

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■概要
インドにおいて、特許出願人は特許法第8条に基づき、対応する外国出願の出願情報や審査経過等についてインド特許庁に対して情報開示を行う義務を負う。情報開示を怠った場合、特許法第64条(特許取消)に基づく特許取消の対象となる場合がある。この特許法第8条の解釈・適用に関して、ニューデリー高等裁判所が注目される判断を下した。
■詳細及び留意点

【詳細】 以下に抜粋するインド特許法第8条に基づき、特許出願人は、インドにおける出願日以降、特許付与日までの間、外国対応出願の出願内容や審査内容について特許庁に対する情報開示義務を負う。   第8条 外国出願に関する情報及び誓約書 (1)本法に基づく特許出願人がインド以外の如何なる国においても、同一若しくは実質的に同一の発明について単独で若しくは他の何人かと共同で特許出願を行っている場合、又は自己の知る限りにおいて当該出願が、何人かを通じて若しくはその者から権原を取得した何人かによって行われている場合は、当該出願人は、自己の出願と共に、又はその後長官が許可することがある所定の期間内に、次に掲げるものを提出しなければならない。 (a)当該出願の明細事項を記載した陳述書、及び (b)前号にいう陳述書の提出後所定の期間内にインド以外の何れかの国にした同一又は実質的に同一の発明に係る他の各出願(ある場合)について,インドにおける特許付与日まで、前号に基づいて必要とされる明細を書面で随時長官に通知し続ける旨の誓約書 (2) インドにおける特許出願後であって,それについての特許付与又は特許付与拒絶まではいつでも,長官は,インド以外の国における出願の処理に関する所定の明細を提出することを出願人に要求することもでき,その場合,出願人は,自己に入手可能な情報を所定の期間内に長官に提出しなければならない。ニューデリー高等裁判所は、2014年11月に特許法第8条の解釈及び適用について、注目される判断を下した。この判決は、特許法第8条違反により特許は自動的に取消されるのではないとする従前の判決を支持し、無効理由が見出された場合でも特許取消にあたっては裁判所が裁量権を有することを認めたものである。これは特許権者にとっては、大きな救済と言える。これまで主要先例としてしばしば引用されるChemtura判決(Chemtura Corporation vs Union Of India & Ors CS(OS) No. 930 of 2009)等による厳格適用の判断基準から、より柔軟な判断基準が示されている。以下、この事件の概要と判決内容、その意義を紹介する。   ○ 事実概要 一審-事件番号:CS(OS) No.2206OF2012 判決日:2013年11月6日 控訴審-事件番号:FAO(OS)No.16OF2014 判決日:2014年11月7日 一審原告であるKoninklijke Philips Electronics N.V.(フィリップス社)は、Sukesh Behl及びM/s. Pearl Engineering Companyを相手取り、DVDビデオ及びDVD-ROMディスク技術に関するインド特許第218255号の侵害の永久差止を求める訴訟を提起した。被告は、特許法第8条の要件を満たしていないとして、当該特許の無効宣言を求める反訴を提起した。フィリップス社は、本件特許の審査過程において、特許法第8条に関する情報の一部を提出しなかったことを認める一方、情報の未提出は不注意によるものであり、提出されなかった情報は、本件特許の付与に重大な意味を持たないとする宣誓供述書を提出した。この宣誓供述書に基づき、被告は、第8条の情報非開示に関するフィリップス社による「明瞭且つ明快な自認」に基づく勝訴命令を申し立てた。   ○ 一審の判断 単独裁判官は被告の主張を認めず、申立てを却下した。判事は、第8条の情報非開示は、あくまでも「公判可能な争点」を提起するものであるとした。さらに、情報の非開示が意図的/悪意であるか否かは「証拠の問題」であり、これは公判終結時においてのみ判断することができるとした。被告は控訴した。   ○ 控訴審の判断 小法廷は、第8条の遵守に関する問題は、公判終結時においてのみ判断を下すことができるとした一審における単独裁判官の判断を支持した。小法廷は、特許は自動的に取り消されるものではなく、公判終了後に、情報の非開示が重大であり意図的なものであると裁判所が判断した場合にのみ取り消されるものであるとする従前の判決を確認した。   ○ 本判決の意義 本判決は、第8条に基づく、対応外国出願の詳細を開示する出願人の負担を軽減するものではないが、特許権者にとっては、有利で歓迎すべき解釈である。フィリップス社にとっては、悪意の非開示、意図及び重大性が第8条違反の結果判断の基準として示されたのみならず、第8条違反により特許が自動的に取り消されるという厳格な解釈が明確に否定されたのである。   本判決の重要な側面として、本判決が特許法第8条にとどまらず、第64条(特許の取消)の序文について解釈していることが挙げられる。特許法第64条(1)は、以下の通り規定する:   第64 条 特許の取消 (1)本法の規定に従うことを条件として、特許については、その付与が本法施行の前か後かを問わず、利害関係人若しくは中央政府の申立に基づいて審判部が、又は特許侵害訴訟における反訴に基づいて高等裁判所が、次に掲げる理由の何れかによって、これを取り消すことができる。   高裁は、「取り消すことができる」という平易かつ曖昧な文言は、特許取消を扱う裁判所に対して裁量権を明確に与えるものであると認定した。この認定は、この裁量権は第64条(1)に記載するすべての無効理由に等しく適用されるものであることを示すものである。これは、特許の有効性を防御する特許権者にとって好ましい解釈である。

■ソース
インド特許法(和文)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo.pdf インド特許法(英文)
http://ipindia.nic.in/ipr/patent/patent_Act_1970_28012013_book.pdf
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研
■協力
Remfry & Sagar
■本文書の作成時期

2014.12.3

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