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(中国)先使用の著名商号所有者に先使用による異議申立を認めるべきとした事例‐STAPLES事件判決

2013年06月04日

  • アジア
  • 審決例・判例
  • 商標

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■概要
本件は、外国企業が中国で使用することによって既に一定の知名度を有している商号について、先使用権により保護が認められた事案である。既に一定の知名度を有している他人の商号と商標を出願することは公衆に混同を与え、先の商号権利者の利益に損害を与える可能性があるため、当該商標は登録を許可されない。
■詳細及び留意点

【詳細】

 本件は、第4734728号「STAPLES及び図」商標(以下、「被異議申立商標」という。)について異議申立を行なったところ却下された(中国商標局異議裁定2011年商標第01458号)ため、これを不服として、2011年3月9日に中国商標審判部(中国語「商标评审委员会」)に対し、不服審判を請求した案件である。

 

 請求人は世界最大手の事務用品の小売販売、代理販売商であって、1986年より現在まで一貫して、「STAPLES」を商標及び英文商号として使用しており、中国において102件の商標出願を行なっていた。請求人は、請求人の商標及び英文商号「STAPLES」は、被異議申立商標の出願日より以前に既に使用され、一定の影響力を持ち、中国において高い知名度を有しているところ、被異議申立商標と請求人の商標及び英文商号は同一であり、使用商品は同一又は類似することから、被請求人には悪意があると考えられ、被異議申立商標は、他人が既に使用し一定の影響力の有る商標を先に登録出願したもので、請求人の商号権に損害を与え、商標法第31条の規定に違反しているとして、被異議申立商標は登録を許可されるべきではないと主張した。

 これに対し、中国商標審判部は、請求人が提出した証拠は「STAPLES」について請求人が先に使用していた商標及び英文商号であることを証明しうると認定し、請求人の使用を通して、当該商標と商号は事務用品販売サービス分野において、一定の知名度を有しているとした。その上で、被異議申立商標の文字と請求人の商標及び商号は完全に同一であり、被異議申立商標の指定商品であるクロノグラフ、定規(測定器具)等の商品と請求人が取扱う事務用品の販売サービスとは密接な関係にあり、商品の販売ルート、消費対象、サービス内容及び対象などの面において類似していると判断した。そして、被請求人は請求人と同業者であり、「STAPLES」が請求人によって先使用されている商標及び商号であることを知っており、類似商品において先駆けて同一文字の被異議申立商標の登録出願を行うその行為は、他人が既に使用し一定の影響力のある商標を先に登録する不正な手段であると同時に、公衆に混同を与え、先の商号権権利者の利益に損害を与えるものであるということができ、被異議申立商標は商標法第31条に規定される状況に該当しているとして、中国商標審判部は、被異議申立商標は登録を許可されないものとするとの裁定を下した。

                                                 
被異議申立商標

 

【留意事項】

(1)商標法第31条における先使用権には商号権も含まれ、その適用条件は以下の通りである(商標審理基準第3部分2.2)。

(i)商号の登記、使用日が係争商標の登録出願日より前であること。

(ii)当該商号が中国の関連する公衆の間において一定の知名度を有すること。

(iii)係争商標を登録及び使用すると、関連する公衆に混同を生じさせやすく、既存の商号権者の利益が侵害されるおそれがあること。

 

 よって、外国企業がその商号と同一の商標を中国で先に出願され、中国においてその商号を使用しはじめた時期が他人に出願された商標の出願日よりも早かった場合、その商号が中国の関連する公衆に一定の知名度があり、被異議申立商標の商品又はサービスと、商号権利者の提供する商品またはサービスとが密接な関係にあれば、当該外国企業は先使用の商号権をもって商標の異議申立を請求(公告日から3ヵ月以内)し、保護を図ることが可能である。なお、中国において英文商号は登録が認められていなかったところ、「最高裁判所による不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」第6条において、企業登記主管機関が法に従って登記登録した企業名称及び中国国内でビジネス上使用されている外国(地域)の企業名称は、不正競争防止法第5条第3項の「企業名称」と認定すべきであるとされており、本案ではこの解釈に則り、英文商号であっても、中国国内でビジネス上使用されている外国(地域)の企業名称は不正競争防止法第5条第3項の「企業名称」と認定されるべきであると判断された点も注目に値する。

(2)先に商号を使用していたという事実は、企業の登記資料、当該商号を使用していた商品の取引文書、広告宣伝資料などをもって証明することが可能である。また、既に一定の知名度があることについては、相手方の地域で知られている必要があり、その判断においては、商号の登記時間、当該商号を使用して経営活動を行っている時期、地域範囲、経営業績、広告宣伝状況等が考慮され得る。

 

(3)商標登録後においては(異議申立が不成立だった場合も)、商標審判部に対して無効審判請求(中国語「争议申请」)をすることもできる(商標法第41条第2項)。また、裁判所に民事訴訟を提起することもできる(裁判所による登録商標、企業名称と先行権利との抵触に係る民事紛争事件の審理における若干の問題に関する規定第1条)。

■ソース
・中国商標審判部商標異議不服審判裁定書2012年8月27日付商評字(2012)第35449号
・中国商標法
・中国商標審理基準 第3部分 他人の既存の権利の侵害の審理基準
・最高裁判所による登録商標、企業名称と先行権利との抵触に係る民事紛争事件の審理における若干の問題に関する規定
・最高裁判所による不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈
■本文書の作成者
中科専利商標代理有限公司
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2013.02.06
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