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(台湾)コンピュータ・プログラム著作物とその実質的類似性の判断に関する実務の紹介

2014年07月25日

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■概要
コンピュータ・プログラム著作物は、台湾における著作権の保護対象の1つであるが、コンピュータ・プログラム著作物の範囲、特にプログラミング言語ではない「プログラム著作物の構造、組織又はユーザインタフェース」がプログラム著作物としての保護を受けるか否かは、なおも異なる意見が存在する。現在の台湾実務においては、「プログラム著作物の構造、組織又はユーザインタフェース」を著作権の保護対象とする傾向があるが、プログラム著作物が実質的に類似しているか否かを判断する際、著作権の保護対象ではない抽象的概念を権利侵害判断の範囲から先に除外するために、「分離、濾過、比較」という判断手法が用いられている。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) コンピュータ・プログラム著作物の定義

 コンピュータ・プログラムの定義について、主務官庁では、「直接または間接的にコンピュータに一定の結果を生み出させることを目的とする、指令の組み合わせの著作物である」と認識している(1992年年6月10日台(81)內著字第八一八四〇〇二号公告「著作権法第5条第1項各号における著作物内容の例示」二の(十))。

 

(2) プログラム著作物の作成プロセス

 プログラム著作物の作成過程は、抽象的思想からの具体化プロセスであり、通常、以下の5段階を経て作成される(Computer Associates International, Inc. v. Altai, Inc., 982 F2d 693, 702 (2d Cir.1992))。

 

  • まず、プログラムの最終目的(purpose)又は機能(function)を限定する。
  • 次に、目的と機能に基づき、いくつかのモジュール(module)又はサブルーチン(subroutine)に分割または区別する。
  • さらに、実際の実行における必要に基づき、各当該下位サブルーチンの組合せ又はロジック関係を配置し、それらを各フローチャート(flow chart)又は組織図(organizational chart)に変換し、各モジュール又はサブルーチン間の実行が阻害なく行われるよう確保する。この際、各当該モジュール又はサブルーチン間において、相互に繋がって組合せて表現された全体的機能は、当該コンピュータ・プログラムの構造(structure)となる。
  • プログラムの全体的構造が確定された後、コーディング(coding)されている当該構造は、通常2つのステップを含んでいる。すなわち、プログラマーがプログラミング言語(例えばBasic, Cobal等)に基づいてソースコード(source code)を作成し(第1段階)、ソースコードが完成された後、それをオブジェクトコード(object code)に変換する(第2段階)。これによりコンピュータ機器に読み取りさせることができ、プログラミングの基礎が完成する。

 

(3) プログラム著作物の保護範囲

  • プログラミング言語文字自体

プログラム著作物の範囲について、一般的にはソースコードとオブジェクトコードのいずれもプログラム著作物であると認められる(最高法院2010年5月6日付民国99年台上字第2800号刑事判決)。

  • プログラミング言語の文字でない部分

著作権による保護が簡易に回避されてしまうことを防ぐため、権利侵害者がプログラム著作物を一字一句コピーしたわけではない場合でも、実務上、プログラム著作物の構造、組織またはユーザインタフェースをコピーしたときには、権利侵害を構成することになるであろう(智慧財産法院2010年2月4日付民国98年度民著上字第16号民事判決)。

 

(4) プログラム著作物を侵害する非文字の部分の実質的類似性の判断

  • 著作物をコピーしたか否かについて、現在の実務では、権利侵害者が著作の内容に接触し、且つコピーされたと訴える内容が著作権者の著作物と実質的に類似していなければならないとされている(智慧財產法院2013年12月12日付民国102年度民著訴字第4号民事判決)。
  • ただし、著作権の保護対象は抽象的思想又は概念ではなく、表現にしか及ばない(著作権法第10条之1)。実務上、コピーしたかを認定する際、プログラム著作物の「プログラミング言語文字でない部分」のいずれが著作権の保護対象である「表現」に属しているか、及びいずれが単なる「抽象的概念」に属しているかについて、区別する必要があると考えられている。
  • 前述のとおり、プログラムの創作は抽象的思想から具体化されていくものである。一つのプログラム著作物の「プログラム言語文字でない部分」を保護するとき、保護を受けるべきではない抽象的概念が著作権の保護範囲に包含されることを避けるため、プログラム著作物の「プログラム言語文字でない部分」がコピーされて実質的類似性を有するか否かを判断するときは、実務上、以下の手順を取るべきであるとされている(最高法院2009年5月21日付民国98年度台上字第868号民事判決)。

(i)     (著作権の保護の享有を主張する者が保護を受けている)コンピュータ・プログラムの構造を分離する。

(ii)    分離した後、そのうち保護されるべき表現の部分を濾過または抽出し、高度に抽象的な思想や概念等を有する公共財の部分を取り除く。

(iii)  最後に、著作権者が享有する権利部分、すなわち保護される表現の部分に権利侵害者が接触したかを確認すると同時に、2つのプログラム間における実質的類似性の程度に基づいて、著作権者の著作財産権を侵害するかを判断する。

 

【留意事項】

  • 現在、コンピュータ・ソフトウェアが権利侵害を構成しているかを認定する際、審理する裁判所は専門家の意見に頼ることが多い。そのため、専門家の意見及び鑑定方法の正確性、専門性が重要となる。
  • プログラム著作物のコピーにあたるか否かの判断において、構造(structure)、順序(sequence)及び組織(organization)、メニュー指令と構造(menucomm and structure)、下級メニュー指令または補助説明(longprompts)、マクロ指令(marcoinstruction)、ユーザインタフェース(user interface)等の文字でない部分を比較する場合、両者の「機能」が近似又は実質的に類似していていたとしても、「機能」は著作権保護の対象ではないため、表現方式が異なっていれば、当該著作物のコピーにならないことに留意すべきである。
  • プログラム著作物についての権利侵害か否かを確認する際、必ずしもソースコードを比較しなければならないというわけではないが、ソースコードは創作履歴の重要な証明であり、著作権の帰属の判断において、係争プログラム著作物の著作権を有していることの証拠となり得る。
■ソース
・台湾著作権法
・Computer Associates International, Inc. v. Altai, Inc., 982 F2d 693, 702 (2d Cir.1992
http://cyber.law.harvard.edu/people/tfisher/IP/1992%20Altai.pdf ・最高法院2010年5月6日付民国99年台上字第2800号刑事判決(下記URLで検索が可能)
http://jirs.judicial.gov.tw/Index.htm ・智慧財產法院2010年2月4日付民国98年度民著上字第16号民事判決(同上)
・智慧財產法院2013年12月12日付民国102年度民著訴字第4号民事判決(同上)
・最高法院2009年5月21日付民国98年度台上字第868号民事判決(同上)
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.25
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