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中国におけるパリルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点

2013年05月31日

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■概要
外国出願人が中国に専利出願を行う際、パリ優先権を主張して出願する方法(以下、「パリルート出願」という。)、PCT出願の中国国内段階への移行によって中国に出願する(以下、「PCTルート出願」という。)方法がある。パリルート出願とPCTルート出願の手続き上の相違点は、以下のとおりである。
■詳細及び留意点

(1)出願方法

(i)  パリルート出願

パリルート出願は、特許、実用新案、意匠のいずれの出願も可能であり(専利法第29条)、出願の願書において専利類型(特許/実用新案/意匠のいずれか)を指定しなければならない。出願の願書において専利類型を指定しなければ、中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)はその出願を受理しない(実施細則第39条(6))。また、同一の発明創作について、特許と実用新案とを同日に出願する(特実同日出願)ことができる(専利法第9条)。ただし、出願の願書にお互いに他方の出願がある旨を声明しなければならない(実施細則第41条)。

(ii) PCTルート出願

PCTルート出願は、特許、実用新案の出願に限られ、中国国内段階に移行時に特許または実用新案のいずれかを選択することができる(実施細則第104条第1項第1号)。ただし、中国国内段階に移行した後、専利類型の変更はできない。また、PCTルート出願の中国国内段階への移行に際しては、特実同日出願をすることができないと実務上解されている。

 

(2)出願期限

(i)  パリルート出願

パリルート出願の場合、特許・実用新案については、出願人が外国で最初に出願した日から12ヶ月以内、意匠については出願人が外国で最初に出願した日から6ヵ月以内に中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)に出願しなければならず、当該期限が過ぎた場合、優先権の主張は認められなくなる(専利法第29条)。なお、当該期限は延長することができない。

(ii) PCTルート出願

PCTルート出願の場合、PCT出願の優先日から30ヶ月以内に中国国内段階への移行手続きを行わなければならない。なお、優先日から30ヶ月以内に中国国内段階への移行手続きを行わなかった場合、期間延長料(CNY1000)を納付して2ヶ月の猶予期間を利用すれば、最長で優先日から32ヶ月以内に中国へ移行することも可能である(実施細則第103条)。2ヶ月の猶予期間を利用するにあたっては、別途、期間延長手続きを行う必要はなく、期間延長料を中国国内段階への移行時に納付することによって、自動的に2ヵ月猶予される。

 

(3)基礎出願の出願書類の謄本の提出

(i)  パリルート出願

パリルート出願の場合、出願人が中国における出願日から3ヶ月以内に優先権を主張する基礎出願の出願書類の謄本を提出しなければならない。期限内に提出しない場合、優先権は主張しなかったものとみなされる(専利法第30条)。

(ii) PCTルート出願

PCTルート出願の場合、通常、中国特許庁はWIPOから優先権の基礎出願の出願書類の謄本を受け取るため、出願人が基礎出願の出願書類の謄本を提出する必要はない(実施細則第110条第3項)。

 

(4)自発補正の時期

(i)  パリルート出願

パリルート出願の場合、PCTルート出願とは異なり、特許協力条約第28条(又は第41条)に基づく自発補正の機会がない。パリルート出願の自発補正可能な時期は以下のとおりである。

(a)特許出願の場合

      • 実体審査請求時(実施細則第51条第1項)
      • 中国特許庁による実体審査に入った旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内(実施細則第51条第1項)

(b)実用新案又は意匠出願の場合

出願日から2ヶ月以内(実施細則第51条第2項)

(ii) PCTルート出願

(a)特許出願の場合、以下の3つの時期に自発補正を行うことができる。

      • PCT出願の中国国内段階への移行時(特許協力条約第28条(又は第41条))
      • 実体審査請求時(実施細則第51条第1項)
      • 中国特許庁による実体審査に入った旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内(実施細則第51条第1項)

(b)実用新案出願の場合、以下のような2つの時期に自発補正を行うことができる。

      • PCT出願の中国国内段階への移行時(特許協力条約第28条(又は第41条))
      • 中国に移行した日から2ヶ月以内(実施細則第112条第1項)

 

(5)誤訳訂正

(i)  パリルート出願

パリルート出願の場合、中国出願時に出された中国語明細書が出願書類であるため、誤訳訂正を行うことができない。

(ii) PCTルート出願

PCTルート出願は、PCT出願時に提出された外国語書面が出願書類であるため、中国国内段階への移行時に誤訳がある場合、誤訳訂正を行うことができる。誤訳訂正は、自発的な訂正と受身的な訂正とに大別できる(審査指南第3部分第2章5.7)。

(a)自発的な訂正

      • 中国特許庁での特許出願の公開作業が完了するまでの間
      • 中国特許庁による特許出願が実体審査に入った旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内

(b)受身的な訂正

実体審査において、出願書類に翻訳による不備がある場合、審査官により、誤訳訂正手続を行うよう、拒絶理由通知書にて要求される。拒絶理由通知書に応答する所定の期間内に誤訳訂正手続きを行わなければ、その出願は取下げられたものとみなされる。

また、実務においては、上記(a)と(b)以外に、出願人は拒絶理由通知を検討する際に誤訳があると自ら発見した場合、誤訳訂正手続きを特許出願が登録されるまでに行えば通常認められる。

 

(6)日中PPH(中国特許庁への申請)の利用

(i)  パリルート出願

パリルート出願では、出願人は基礎出願の日本特許庁の審査書類と審査結果に基づき、中国特許庁にPPHを請求することができる。

(ii) PCTルート出願

PCTルート出願については、日本基礎出願の優先権が主張された場合、出願人が日本特許庁の当該基礎出願に対する審査書類と審査結果に基づき、または、PCT国際段階の調査結果または国際予備審査の結果や審査書類に基づき、PPHを請求することができる。つまり、PCTルート出願の場合、出願人はより便利、より有利な審査結果を利用して、PPHを請求することができる。

 

(7)料金

(i)  パリルート出願

パリルート出願時の官庁費用はCNY950、代行手数料はCNY4,500である。

(ii) PCTルート出願

    • PCTルート出願時の官庁費用はCNY950、代行手数料はCNY5,000である。
    • 日本、ヨーロッパ又はスウェーデン特許庁による国際調査報告が出されたPCT出願は、中国移行後、実体審査の請求手数料の20%の割引が可能である(審査指南第3部分第1章7.2.2)。
    • 中国特許庁による国際調査報告及び国際調査機関の見解書が出されたPCT出願については、中国移行後の実体審査の請求手数料は無料である(審査指南第3部分第1章7.2.2)。

 

【留意事項】

 中国に特許又は実用新案を出願する際に、パリルート出願、PCTルート出願のいずれを利用すべきかについては、誤訳訂正の観点からみれば、PCTルート出願を利用した方が、万が一、誤訳が発生した場合に誤訳訂正のチャンスが保証されているため、パリルート出願に比べてメリットがあると言える。

 一方、費用の観点からみると、PCTルート出願の場合、PCT出願自体にも費用が発生するため、出願する予定の国が少ないほど出願費用は割高になる。従って、出願する予定の国が少ない場合はパリルート出願を利用した方が良いと言える。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南
  第3部分第1章 国内段階に移行された国際出願の方式審査と事務処理
  第3部分第2章 国内段階に移行された国際出願の実体審査
・特許協力条約
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pa_co/pct/mokuji.htm ・日中間のPPH申請手続き
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/patent_highway.htm (日中PPH、PCT-PPH「中国国家知識産権局(SIPO)への申請」参照)
・中国特許庁ウェブサイト 料金表
http://www.sipo.gov.cn/zlsqzn/sqq/zlfy/200905/t20090515_460473.html(専利手数料一覧表) http://www.sipo.gov.cn/zlsqzn/sqq/zlfy/200804/t20080422_390292.html(PCT出願手数料) ・代行手数料(中国弁理士協会ウェブサイト「涉外专利代理服务统一收费标准」)
http://www.acpaa.cn/list_hygl.asp?news_id=752&catid=126
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 中国専利代理人 梁熙艶
一般財団法人比較法研究センター
■本文書の作成時期

2013.01.18

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