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中国におけるコンピュータソフトウェア発明およびビジネスモデル発明の特許性

2018年07月03日

  • アジア
  • 出願実務
  • 特許・実用新案

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■概要
2017年の審査指南改正により、中国において、コンピュータソフトウェアに関する発明およびビジネスモデルに関する発明については、その出願内容に技術的特徴が含まれていれば、必ずしも専利法第25条第1項第2号を根拠に特許性を否定されるとは限らず、特許性を有するか否かを個別に審査される。
■詳細及び留意点

 中国専利法および関連規定に基づき発明が特許性を有するか否かを判断するには、通常、専利法第2条(特許の保護を受けることができる発明の範囲に関する一般規定)、専利法第5条(法律・公益に反する発明、法律・行政法規に違反して遺伝資源を取得または利用して完成された発明については特許権を付与しないとする規定)、専利法第22条(特許権が付与される発明および実用新案が具備すべき実体的要件に関する規定)および専利法第25条(特許権が付与されない知的活動の法則および方法等に関する規定)など複数の観点から判断する必要がある。

 

 以下、コンピュータソフトウェアに関する発明、ビジネスモデルに関する発明の特許性について分析する。

 

 コンピュータソフトウェアに関する発明、ビジネスモデルに関する発明については、従来、発明の改良の対象が方法である場合、その発明の属する技術分野にかかわらず、いずれも専利法上の特許性の要件を満たさず(専利法第2条、第5条、第22条、第25条)、権利付与されないこととなっていた。しかし、審査指南の改正によって実務に変化が生じ、2017年4月1日から新しい判断基準が採用される。

 

 中国の審査官は、審査対象の特許出願が中国専利法の特許性に関する規定に適合するか否かを判断する際、まず発明について保護を求める内容が専利法の保護対象に該当するか否かを判断している。その判断基準は、以下三つの要件である。

特許出願に記載されているものが、

(1)技術的課題を解決するためのものであるか否か

(2)技術的手段を採用しているか否か

(3)技術的効果を奏するか否か

 

 上記三つの要件を全て満たしていれば、他の観点から特許出願において保護を求めるものが特許性を有するか否かを判断する。ビジネスモデルに関する特許出願を例にとれば、従来の審査においては、上述の「三つの要件」についての検討と論理付けが主な着眼点とされ、「知的活動の法則および方法」に該当することを理由として拒絶されていた。しかし、実際のところは、ビジネスモデルについては、専利法、専利審査指南などの法律や規則においてビジネスモデルの特許性を明確に排除することは規定しておらず、純粋な知的活動の法則および方法のみがその特許性が排除されているにすぎない。

 

 専利審査指南第2部分第1章第4.2節は、例えば、組織、生産、商業の実施および経済等の分野における管理の方法や制度、コンピュータ言語および計算法則、各種ゲーム・娯楽のルール・方法、統計、会計および記帳の方法、コンピュータプログラム自体などの、知的活動の法則および方法のみに関係する請求項については、特許権を付与してはならないと規定している。

 

 その一方で、請求項で特定されている中に、知的活動の法則および方法の内容が含まれていても、技術的特徴も含まれるのであれば、当該請求項が全体としては知的活動の法則および方法ではないこととなるため、専利法第25条第1項第2号を根拠にして、特許権を取得する可能性を排除してはならないとも規定されている。

 

 したがって、ビジネスモデルに関する特許出願については、次のように2種類に分けることができる。一つは、完全に自然人の行為によって実現されるビジネスモデル(すなわち、純粋なビジネスモデルに基づく特許出願)であり、もう一つは、コンピュータ、ネットワークなどの自動化手段を利用して実施されるビジネスモデル(すなわち、ビジネスモデル関連の特許出願)であるが、前者は専利法第25条第1項第2号により特許性が否定されるべきだが、後者については、特許性を有するか否かは個別に判断されるべきである。

 

 審査指南の改正に伴って、国家知識産権局は、ビジネスモデルにかかる特許出願について審査を行う際、判断基準を改めた。特許の保護対象の判断については、技術的手段が採用されているか否かを重点的に考察するものとし、技術的手段が採用されていれば、技術の属性の要件を満たすものとされる。

 

 専利審査指南第2部分第1章第2節には、「技術的解決手段とは、解決しようとする技術的課題について採用する自然法則を利用した技術的手段の集合である。技術的手段は、通常、技術的特徴によって表される」と規定されているため、請求項中に技術的特徴が含まれていれば、技術的手段が採用されていることになる。この意味で、知的活動の法則および方法の内容が含まれるビジネスモデルに関する出願の内容に技術的特徴が含まれていれば、全体としては単なるビジネスモデルの特許出願にはあたらないため、専利法第2条第2段落の規定に違反することを理由として特許性が否定されてはならないことになる。

 

 逆に、ビジネスモデルに関する出願に何らの技術的手段も含まれていなければ、単なるビジネスモデルの特許出願にあたるため、特許の保護対象に該当せず、専利法第25条第1項第2号に規定する知的活動の法則および方法の範疇に該当し、また、技術的解決手段の要件も満たさない。

 

 ビジネスモデルに関する特許出願だけでなく、コンピュータプログラムに関する特許出願も類似した問題に直面する。改正前の専利審査指南第2部分第9章第2節には、コンピュータプログラムに関する特許出願の審査基準が規定されており、当該特許出願がコンピュータプログラム自体のみに関係するか、または担持体(記録媒体)に記録しただけのコンピュータプログラムであれば、形態を問わず、すべて知的活動の法則に該当するとされていると規定していた。しかし、審査指南の改正により、上記規定において、「当該特許出願がコンピュータプログラム自体のみに関係するか、または記録媒体に記録しただけのコンピュータプログラムそのものであれば、知的活動の規則または方法に該当する」と従来の規定が改められた。

 

 この改正の趣旨は、コンピュータプログラムそのもの自体、すなわち、コンピュータプログラムを表すコード、例えば、コンピュータ言語で記述されているソースコードまたはオブジェクトコードは、特許法の保護対象から排除される一方、コンピュータプログラムによって反映された技術思想は、知的活動の規則または方法に該当せず、特許法による保護を受けられるということである。さらに、審査指南の改正に伴って、審査実務において、記録媒体に記録されているコンピュータプログラムも特許法によって保護を受けられると改められ、現在このように審査実務が運用されている。

 

 すなわち、コンピュータプログラムに関する特許出願に技術的特徴が含まれていて技術的解決手段を構成する場合は、特許法の保護対象となる。コンピュータプログラムに関する特許出願が技術的課題を解決するためのもので、コンピュータで当該コンピュータプログラムを実行することにより外部または内部の装置等を制御または処理することに反映されているものが自然法則に従う技術的手段で、かつ、これによって自然法則に適合する技術的効果を得ているのであれば、当該特許出願がコンピュータプログラムに関係していることだけを理由にその特許性を否定してはならない。

 

 上述の通り、2017年に行われた審査指南の改正は、出願人の要望を反映し、出願および審査実務に即した形で行われた。これまでに審査の実務で時折物議をかもしたビジネスモデルおよびコンピュータプログラムに関する特許出願の審査基準をより明確に規定し、出願および審査の実情に即し、技術の進歩に寄与できるよう審査基準が改定された。

 

 新しい審査指南の施行に伴う発明の保護対象についての審査基準の緩和により、中国の特許審査の実務において、専利法第22条及び第25条第1項第2号に基づく拒絶理由の適用の機会が少なくなり、技術的手段を含み知的活動の法則にも関係する特許出願に対しても、先行技術文献を用いて新規性、進歩性を判断する審査がなされるように変化している。このような審査実務の変化によって、出願人には審査対象技術が従来技術に対して実質的に顕著な進歩があるか否かについて、より十分な意思表示と釈明の機会が与えられる。これにより、技術の発展に寄与する特許法の立法趣旨に則した審査が促進され、優れた発明に適切な保護を与えられると期待される。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・専利審査指南(2010)
・国家知識産権局令第74号 専利審査指南改訂に関する決定(2017.2.28)
■本文書の作成者
北京三友知識産権代理有限公司
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2018.02.02
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