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オーストラリアにおける特許を受けることができる発明とできない発明

2016年05月16日

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■概要
オーストラリア特許法は総じてかなり広範囲に特許の保護を認めている。ただし、違法性阻却(法律で制定された特許性に対する侵害であっても、特別の事情があるために違法としないケース)や、裁判所が言い渡した重要な判決の結果として、特許保護を受けることができない発明もいくつか存在している。
■詳細及び留意点

【詳細】

1.特許法に基づき特許を受けることができない発明

 オーストラリア特許法第18条第2項において、「人間およびその発生のための生物学的方法」は特許性の適用対象から除外されている。この条項は、立法上の論争の結果として設けられたもので、特許保護の対象外とされる発明に関して、倫理的な根拠に基づく唯一の条文となっている。

 

 この人間に関する特許性の適用除外は、機能的に人間と等価な存在にまで論理的に拡張され、ヒトの受精卵、接合体、胚盤胞、胎芽、胎児、全能性幹細胞等が特許性の適用除外の対象に含まれる。ただし、全能性を持たないヒトの多能性幹細胞は、それら細胞から完全な人間を再生することができないという理由で特許保護の対象となる。

 

 体外受精の方法、核DNAの置換によるクローン作製方法、受精卵および接合体および胎芽の育成もしくは培養に関わる方法、導入遺伝子もしくはドナー遺伝物質もしくはドナー細胞質を受精卵および接合体および胎芽への導入に関わる方法など、特定の方法も特許保護の対象外とされている。

 

 ヒトの胎芽の生成に関わる方法も特許性を阻却される。たとえば、胚性幹細胞を得るための方法に胎芽生成の工程が含まれている場合、胎芽の生成がいかにして行われるかに関わらず、そのような方法は特許性を阻却されることになる。

 

 特許法により特許保護の対象外とされる別の例は、食品もしくは医薬品として利用しうる物質(人間と動物のいずれに用いられるかを問わず、また内用または外用の別を問わない)であって、既知の成分の「単なる混合」に過ぎないものに関係している。そのような「単なる混合物」の作製方法も特許保護の対象外とされる。

 

 「既知の成分の単なる混合」とは、各成分についての既知の特性を総和した以上のものではない、つまり新規の特性を発現するものではない混合物のことである。「混合物」に含まれるものとしては、固形状態(タブレットや錠剤)の粉末もしくは顆粒や、液体もしくは気体の混合物が挙げられ、懸濁液および溶液もこれに含まれうる。

 

 特許法により特許保護の対象外とされる最後の例は、「法に反する」発明に関するものである。法に反する発明とは、その主な用途が紙幣の複製方法などのように明らかな犯罪行為にあたると思われる発明のことである。

 

2.コモンローに基づき特許保護の対象外とされる発明

 特許法に盛り込まれた上記のような特許保護の対象外となる発明の他に、裁判所は通常、「製造の態様」(manner of manufacture)に基づいて判断する基準、すなわち、特許権を主張された発明が単なる着想や発見の域を超えて商業的に有用な結果を生じさせるか否かを基準として、特許保護の対象であるか否かを判断するこの点に関する重要な判例がNational Research Development Corporation v Commissioner of Patents (1959) 102 CLR 252; (1961) RPC 134; 1A IPR 63である。この判例は、かなり古い時期に特許性に関する広範な法理を確立したものである。ある発明が販売可能な製品を製造するとすれば、その発明は特許性を有する。販売可能な製品とは、「実務における有用性」と「人為的に創出された状態」を必要とするものである。

 

 したがって、方法に関する発明は、その最終的な結果として経済活動の分野における有用性を備えた状態が人為的に創出される場合に限り、特許保護の対象とされる。方法に関する発明に有用性があるとされるためには、有用な商業的製品に結びついている必要はないが、特許権者が明細書の中に記載した用途が実現可能であることと、具体的、実質的にして信頼性のある用途が存在することが満たされればよい。

 

 また、「最終的な結果」の例としては、電気的振動・発振が生じること、種蒔き後の土地の完全除草区画、煙霧のない大気、消火後の地下層の形成等が挙げられる。

 

 しかし、以下の主題に関しては、特許保護の対象外とされる主題であるとされている。これらの主題は、「製造の態様」(manner of manufacture)に関する要件を満たさないからである。

・実施する手段のない発見

・単なる着想

・単なる構想もしくは計画

・科学理論

・数学的アルゴリズム

 

 一般に、技術的または実用的な領域に属するものは特許保護の対象とされるが、知的または学術的な領域に属するものは特許保護の対象外とされる。

 

 以下では、具体的なカテゴリーについて述べることにする。

 

2-1.医学的治療方法

 経済的な実用性を有する医学的治療方法および診断方法は、特許保護の対象となる主題である。同様に、人体の外見を改善もしくは変化させるための美容的処置についても、特許保護の対象となる主題である。

 

2-2.ビジネスモデルおよびソフトウェア特許

 オーストラリア特許法の下では、コンピュータソフトウェアまたはソフトウェア関連製品として実施される発明に関して、特許保護の対象であるか否かを明確に規定していない。ただし、その主題は、「製造の態様」に関する要件を満たしていなければならず、単なる構想、抽象的なアイデアもしくは情報の域を超えていなければならない。したがって、事業計画そのものは特許性を持たないが、ビジネスや金融に関係する手法がコンピュータ技術の新たな応用を必要とするものである場合、または別段の有用な物理的成果を生じさせるものである場合、そのような手法は特許保護の対象とされることがありうる。

 

2-3.生物学的素材

 ある生命体が人間の技術的介入の結果として生じた人為的な状態であって自然には発生しないものであるならば、それは特許性を持つことがありうる。

 何かが生物であるという事実のみによって、その生物が特許保護の対象外とされることはない。ただし、その生物が特許保護の対象となるためには、改良もしくは改変された有用な特性を備えている必要があり、例えば、有機的組織体の機能に影響しない変わった特徴を備えているというだけでは特許保護の対象外となる。

 自然発生する微生物は特許性を持たない。それらは発見されたものであって発明ではないからである。ただし、微生物を純粋培養するための方法に関する発明は、技術的発明の要件を満たすであろう。

 最近、オーストラリア高等裁判所は、単離されたDNAは特許性を持たないとの判断を示した。単離されたDNAは、当該DNAの自然状態において既に現れている単なる情報と同じものであるため、というのが高裁の判断の根拠である。ただし、単離されたDNAそれ自体は特許性を持たないとしても、DNAに関わる診断方法および治療方法が特許保護の対象外となるわけではないという点に留意すべきである。

 

2-4.既知の要素の新たな組合せ

 既知の要素の新規な組合せが、実際に機能する相互関係もしくは潜在的に機能する相互関係を備えている場合、その組合せは、特許保護の対象となる。一例を挙げると、特定のゲームに使うためのカードのセットは、そのゲームのルールによって新規の機能する相互関係が潜在的に生じる可能性があるために「製造の態様」(manner of manufacture)であると考えられ、特許性を有すると解釈されうる。既知の要素の組合せに関する特許請求を含むは、機能する相互関係が存在しない場合、特許保護の対象外とされ、審査官から拒絶理由を指摘されることになる。

 

2-5.美術

 「美術」の領域に属する発明は、特許保護の対象外とされている。「美術」とは、通常、美的表現を模索する人間の知的活動の成果であるような「芸術」を含み、絵画や彫刻、音楽その他の美的創造物である。

 ある物の純粋な美的効果は、特許性を持たないが、その物が技術的な特徴を備えている場合、特許保護の対象とされる可能性がある。一例を挙げれば、タイヤの接地面のパターンである。美的な感動を生じさせるための過程または手段の中に技術的な革新が含まれていて、そのために特許性が認められることもありうる。

 

2-6.情報の提示

 情報の提示は、情報それ自体の性質に基づき、特許保護の対象外とされている。文書、書籍、映画等の知的もしくは視覚的なコンテンツは、実用技術ではなく美術もしくは知的技術の方により大きく関係している。

 情報の提示に物理的な外観が関わっているという事実だけによって、特許保護の対象外となるわけではない。情報の表現が純粋に知的もしくは視覚的な性質のものではなく、むしろ実質的な利益を提供するものである場合、その主題は特許保護の対象とされる可能性がある。

 

2-7.数学的アルゴリズム

 数学的アルゴリズムは、それ自体としては特許性を持たないが、処理手順にアルゴリズムが内在しているという事実のみによって特許保護の対象外となるわけでない。数学的手法に関する発明における特定のステップに公式もしくはアルゴリズムを適用することで実質的な利益が生じる場合、それは有用であって特許保護の対象になると考えられる。

 

2-8.試験方法

 試験、観察もしくは測定の方法に関する発明は、経済活動の分野で有用であり、したがって特許保護の対象となる。

 

2-9.作業指示

 従来と同一の製品を製造するために行われる既存の装置または製法の作業構成の単なる「変更」は、特許保護の対象外とされている。この種の発明は一般に「作業指示」(working directions)と呼ばれる。独創的な発明の創意を必要としない作業指示の変更は、「単なる」変更ということになるだろう。

 上記「変更」の結果が新規である場合、または「変更」に独創的な選択が必要とされる場合、変更された製法は、特許性を有する。ただし、単に在来製品をより効率的に生産するため、あるいは従来と同じ効果を生み出す既知の装置をより効率的に操作するために、既知の工程の最適化が行われただけでは、そのような単純な最適化は特許性を持たない。

 

2-10.農業および園芸の方法

 農業および園芸の方法は、家畜および畜産物の処理に関連する方法と同様、一般に特許保護の対象外とされている。

 

2-11.既知の物質の新規な用途

 既知の物質の新規な用途は、特許性を有する。ただし、その用途は以前知られていなかった特性を利用したものでなければならない。たとえば、特定の疾病の治療にとって有用だと分かっている医薬用物質が別の病気の治療にとっても有用だと判明することがある。その場合、第二医薬用途に関する方法は、特許保護の対象とされる。

 既知の物質を特定の用途に適したものにしている既知の特性を求めて、既知の製品の製造に既知の物質を使用することに関係する発明は、特許保護の対象とされる。

 

3.結論

 以上のように、オーストラリアにおいては、ある発明が特許法に規定された比較的狭いカテゴリーにいずれにも該当せず、尚且つその発明が当該技術分野に利益を提供することができる場合に、特許保護の対象になる。

■ソース
・オーストラリア特許法
・National Research Development Corporation v Commissioner of Patents (1959) 102 CLR 252; (1961) RPC 134; 1A IPR 63
■本文書の作成者
Shelston IP
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2015.11.27
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